・様々な消化器症状には多くの内分泌代謝疾患が潜んでいる。
・病歴,身体所見,一般検査所見から疑いを持つことが十分可能である。
・日常診療の上で「ふと感じた違和感」を大切にすることが発見につながる。
・食思不振,体重減少をきたす疾患:下垂体機能低下症・副腎不全,Cushing症候群,褐色細胞腫,副甲状腺機能亢進症,ビタミンD中毒。
・腹痛をきたす疾患:糖尿病性ケトアシドーシス,急性肝性ポルフィリン症,ガストリノーマ。
・便通異常をきたす疾患:甲状腺機能亢進症・甲状腺機能低下症,VIP産生腫瘍。
・肝機能障害をきたす疾患:成長ホルモン(GH)分泌不全症,肝型糖原病。
・膵炎をきたす疾患:副甲状腺機能亢進症,高カイロミクロン/VLDL血症,自己免疫性膵炎。
・巨大舌を呈する疾患:先端巨大症。
・副腎腫瘍を呈する疾患:Cushing症候群,アルドステロン産生腺腫(原発性アルドステロン症),褐色細胞腫。
・免疫チェックポイント阻害薬投与中に起きる疾患:ACTH分泌不全症,無痛性甲状腺炎,甲状腺機能低下症,(劇症を含む)1型糖尿病。
・内分泌代謝疾患を見逃さないため,注意すべき病歴,身体所見,検査所見がある。
・病歴から見つける疾患:ステロイド内服・外用・吸入の中断,下垂体疾患の既往歴,頭頸部の放射線治療歴,糖尿病・骨粗鬆症の治療歴,免疫チェックポイント阻害薬による治療歴。
・身体所見から見つける疾患:色黒,皮膚・口腔粘膜の色素沈着,色白,紙様皮膚,出血斑,巨大舌。
・検査所見から見つける疾患:AST/LDH(/CK)高値,ALP高値,低Na血症,高K血症,好酸球増多,高Ca血症,高TG血症,副腎腫瘍。
様々な消化器症状には多くの内分泌代謝疾患が潜んでいる。主な疾患とその随伴症状,徴候を表1に示した。一般には稀だと思われている内分泌代謝疾患だが,病歴や身体所見,一般検査所見に注意することで疑いを持つことが十分可能である(表2)。日常診療の上で「ふと感じた違和感」を大切にすることが発見につながる。
本稿では病院勤務医,一般診療所の医師が消化器症状に潜む各種の内分泌代謝疾患をどうやったら見つけられるか,病歴や身体所見,一般検査所見に沿って具体的に示す。