過日紹介したメタ解析に続き、またもや「2型糖尿病(DM)例の大血管症抑制には血糖低下治療だけでは不十分」とするメタ解析が、同じグループから報告された。筆頭著者は英国・レスター大学のSetor K. Kunutsor氏。2月26日、Diabetes, Obesity and Metabolism誌に掲載された。
解析対象はランダム化比較試験11報(5万1469例)である。いずれも2型DM例に対する「積極」血糖低下治療と「通常」血糖低下治療による、「大血管症」・「細小血管症」抑制作用が比較された試験だ。わが国で実施された"J-DOIT3"と"DNETT-Japan"も含まれている。対象の加重平均年齢は62歳、2型DM罹患期間は0年から15.5年まで幅があった。試験開始時のHbA1c加重平均値は7.4%、「積極」群における観察終了時到達HbAc1加重平均値は6.6%、「通常」群で7.2%だった。血糖低下治療期間は加重平均で6.1年である。
これら11試験を対象に、以下が検討された。すなわち、
・「積極」群と「通常」群間における「大血管症」と「細小血管症」「有害事象」リスクの差
・HbA1c低下幅(「積極」群と「通常」群間の差)と「大血管症」「細小血管症」リスク減少幅の関係
・「積極」vs.「通常」と「大血管症」
「積極」群は「通常」群に比べ、「心血管系(CV)死亡・心筋梗塞・脳卒中」リスクを減少させなかった(ハザード比[HR]:0.97、95%信頼区間[CI]:0.92-1.03)。虚血性心疾患を心筋梗塞だけでなく「不安定狭心症入院」まで含んでも同様で、有意差はなかった。さらに「冠血行再建」と「心不全入院」まで加えて比較しても同様だった。ただ、「非致死性心筋梗塞」のみで比較すると、「積極」群は「通常」群に対し有意なリスク低下が認められた(HR:0.84、95%CI:0.75-0.94)。
・「積極」vs.「通常」と「細小血管症」
「積極」群における「神経症・腎症・網膜症」の対「通常」群HRは0.88(95%CI:0.77-1.00)だった。
・「積極」vs.「通常」と「有害事象」
「積極」群は「通常」群に比べ全有害事象発現リスクに差はないものの、重篤低血糖についてはHRが1.88の有意高値だった(95%CI:1.24-2.84)。
・HbA1c低下幅とイベントリスク
HbA1c低下幅が大きくなるほど「CV死亡・心筋梗塞・脳卒中」のリスクが減少する弱い傾向は認められたが、有意な相関はなかった。むしろ「CV死亡」に限れば逆に、HbA1c低下幅が大きくなるほどリスクは高くなる傾向を認めた。これは「心不全」「総死亡」でも同様だった(いずれも有意相関とはならず)。
細小血管症については、網膜症で、HbA1c低下幅の増大に伴う弱いリスク低下傾向を認めたが、有意な相関ではなかった。
Kunutsor氏らは大血管症の抑制には「厳格な血糖管理だけでは不十分なのだろう」と考察し、血糖管理以外を含めた包括的治療の重要性を強調している。また「厳格な血糖管理が後年になって死亡やCVイベントを抑制する」とする「遺産効果」の有無については「さらなる検討を要する」とのスタンスだ。UKPDS80で初めて報告された「遺産効果」だが、その後報告されたADVANCE試験延長観察(ADVANCE-ON)やACCORD試験延長観察(ACCORDION)、VADT試験延長観察ではいずれもその効果は否定されている。
本研究はServier Affaires Medicalesから資金提供を受けた。