日本医学会/日本医学会連合の門脇孝会長と日本医師会の松本吉郎会長は3月13日、日医会館で共同会見を開き、ゲノム医療推進法(良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするための施策の総合的かつ計画的な推進に関する法律)に対する提言を発表した。ゲノム研究は現在、熾烈な国際競争に突入しており、国家的な体制整備が遅れているわが国の現状に危機感を表明。オープンサイエンスを進めて大規模な基盤構築を図ること、一方でゲノム情報が明らかにされることで不当な差別が生じないよう、罰則のある法律を整備することなどを求めている。
ゲノム医療推進法は2023年6月に公布、施行され、基本計画の策定に向けて同年12月から厚生労働省のワーキンググループで検討が進められている。今回の提言は、ゲノム医療はほとんどすべての医学・医療分野に関わることから、日本医学会の142分科会の意見を取り入れた上でとりまとめられたもの。
提言ではまず、世界各国はゲノム医療の実現に向けて国家レベルの取り組みを進めていることに言及。このためわが国でも、国が大規模なゲノム関連データの収集と利活用を進める必要性を強調、そのためには「大規模な基盤構築が不可欠であり、諸外国と同様、あるいはそれ以上の国家レベルでの推進が求められる」と提言。その際、オープンサイエンスの理念が重要であるとして、「わが国がオープンサイエンスの先駆者として体制を整備することは、新たな科学立国としての方向性を世界に示し、わが国のサイエンス分野における地位の維持と向上に直結するものである」と指摘している。
提言ではさらに、ゲノム医療は厚労省の所掌範囲に限られないとして、関係省庁にまたがる検討を要請。具体的な課題として、①総務省と厚労省は、改正個人情報保護法を一部阻却してゲノム医療を所管する特別法の制定を検討する、②文部科学省は、遺伝・ゲノムリテラシーの向上のために遺伝教育の充実を図る、③「遺伝子検査ビジネス」は現在、経済産業省が所管しているが、厚労省による適切な規制のあり方を検討する―などを列挙している。
このほか提言では、遺伝カウンセリングを含む体制整備の充実、ゲノム情報が明らかにされることで患者や血縁者らが不当な不利益や差別を受けることがないよう、罰則のある法律を策定することも求めている。