PCI施行後のステント内再狭窄に対しては、わが国で2013年にパクリタキセル塗布バルーン(PCB)再拡張による標的血管不全減少(vs.通常バルーン)が、ランダム化比較試験(RCT)で確認されている[Habara S, et al. 2013]。それから10余年、薬剤溶出ステント(DES)利用率/テクノロジーがさらに進んだ今日でもその知見は維持されることが、より大規模な米国の検討でも確認された。ベス・イスラエル・ディーコネス医療センター(米国)のRobert W. Yeh氏らが3月9日、Journal of American Medical Association誌で報告した。
本試験の対象は米国在住の、ステント内再狭窄を来した600例である。「再狭窄」の定義は、症候性例では狭窄率「≧50%」、無症候性例なら「≧70%」とした。近時のSTEMI例、非保護左主幹部病変例などは除外されている。同様にバルーン再拡張時の前拡張失敗例も除外された。
これら600例は再拡張に、「PCBを用いる」群(406例)と「薬剤非塗布通常バルーン」群(194例)にランダム化された。術者は患者が割り振られた治療群を知っていたが、評価項目判定者には盲検化されていた(PROBE法)。
その結果、1次評価項目であるバルーン施行後1年間の標的病変不全(標的病変血行再々建を要した虚血・標的血管心筋梗塞・心臓死)の発生率は、「PCB」群が17.9%、「通常バルーン」群が28.6%となり、「PCB」群の有意なリスク減少が確認された。ハザード比[HR]は0.59(95%信頼区間[CI]:0.42-0.84)だった。両群の発生率曲線は観察開始から1カ月半ほど経過後から乖離を始め、その差は試験期間を通じて広がり続ける傾向を認めた。
次に「標的病変不全」の内訳を見ると、「心臓死」リスクには両群間で有意差はなかったものの、「標的病変血行再々建を要した虚血」(HR:0.50、95%CI:0.34-0.74)、「標的血管心筋梗塞」(同:0.51、0.28-0.91) はいずれも、「PCB」群で「通常バルーン」群に比べリスクは有意に低かった。また「PCB」群における「標的病変不全」リスク減少は、年齢や性別、糖尿病合併の有無、さらに再狭窄前留置ステントの種類(DES/ベアメタルステント)にも有意な影響を受けていなかった。
なおQOL関係の評価項目は、両群間に差を認めなかった。本試験実施の背景には、米国における「ステント内再狭窄へのPCB承認遅れ」があったとのことだ。
本試験はBoston Scientific Corp.が資金を提供した。