腎動脈瘤は,剖検例の0.01~0.09%,CT検査施行例の0.7%に発見されるとされ,稀な疾患である。ほとんどが偶発的に発見され,自然破裂する頻度は3~5%とされている。成因としては,動脈硬化,線維筋性異形成,結節性多発動脈炎などの血管炎,感染,外傷,医原性などが挙げられる1)。
多くは無症状である。比較的多く認められる臨床症状は,高血圧,血尿(肉眼的あるいは顕微鏡的),側腹部痛,腹部血管雑音となる1)。
精査では造影CTが有用である。特にCT angiographyは,3D構築することで動脈瘤の部位,大きさ,形状,分枝の有無を把握することができる。造影CTを施行することができない場合は,MR angiographyが有用となる2)。
絶対的な治療適応は,破裂動脈瘤,腹痛や血尿,内科的治療抵抗性の高血圧を示す症候性の動脈瘤である。無症候性の動脈瘤は,破裂のリスクの高い症例が治療適応となる。瘤径2cm以上,増大傾向,妊娠・出産可能年齢の女性,腎動脈狭窄や血栓塞栓症や動脈解離などの血管病変の存在がリスクになるとされてきた。近年は瘤径3cm以上を適応とするという報告もある3)。外傷後や腎部分切除後の仮性動脈瘤は,経過観察で縮小・消退するもの,逆に速い経過で増大し治療を要するもの,がある。
一手目 :〈瘤径が小さく無症状の場合〉血圧管理を行い,画像評価で経過観察
二手目 :〈治療適応となる場合〉血管内治療
低侵襲であり,まず検討される。コイル塞栓術,liquid塞栓術,ステントグラフト留置術がある。
三手目 :〈治療変更〉手術療法
血管内治療が難しい場合に適応となる。腎動脈形成術,自家腎移植がある。腎動脈瘤が破裂し急性出血をきたした際は,緊急手術となり,腎摘除術が必要になることがある。
腎動脈瘤は,治療に関してわが国ではガイドラインはなく,治療適応に関して各症例で検討しなければならない。治療適応と考えた際も,治療法について放射線科医や血管外科医とのカンファレンスが必須となる。
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