冠動脈狭窄を認めるものの、冠血流を著明低下させていない不安定プラークに経皮的冠動脈形成術(PCI)を施行すると、薬剤治療のみに比べ虚血性心イベントリスクが有意に低下する―。エポックメイキングとも思われるランダム化比較試験(RCT)“PREVENT”が、4月3日から米国アトランタで開催された米国心臓病学会学術集会で報告された。
しかし「PCI群では抗血小板併用やβ遮断薬服用率が有意に高い」、「非盲検試験でハードエンドポイントに差がない」など、結果の解釈は難しそうだ。蔚山(ウルサン)大学校(韓国)のSeung-Jung Park氏の報告から紹介する。
・導入基準等
PREVENT試験の対象は「冠動脈狭窄率≧50%」ながら「冠血流予備量比(FFR)≧0.80」、かつ血管内超音波(IVUS[グレーIVUSを含む])で不安定プラークを認めた韓国在住の1606例である。ステント留置例や冠動脈バイパス施行例は除外されている。年齢中央値は65歳、女性は27%だった。
虚血性心疾患の内訳は「安定狭心症/無症候性心筋虚血」が最多の84%、次いで「不安定狭心症」12%、「心筋梗塞(MI)」4%だった。
これら1606例は至適薬剤治療を受けた上で、PCI「追加」群と「非追加」群にランダム化され、非盲検下で観察された。1次評価項目は「心臓死・標的血管MI・心筋虚血を端緒とする標的血管血行再建・狭心症増悪/不安定狭心症による入院」である。
PCIには当初、生体吸収型ステント(Absorb)を用いたが発売中止となったため、エベロリムス溶出ステント(XIENCE)が使用された。なおPCI「追加」群では施行6~12カ月間、必要に応じて抗血小板薬併用(DAPT)を追加した。
・抗血栓薬/心保護薬服用状況(論文付録から引用)
試験開始から終了時まで、DAPT服用率は一貫してPCI「追加」群で多かった。2年目終了時の数字は35.9% vs. 16.8%である。同様にβ遮断薬服用率も「追加」群で若干だが有意に高かった(1年目は60.3% vs. 53.9%、2年目も60.0 % vs. 53.3%)。
一方、硝酸薬とカルシウム拮抗薬の服用率には差を認めなかった。
・1次評価項目
2年間の観察期間後、「心臓死・標的血管MI・心筋虚血を端緒とする標的血管血行再建・狭心症増悪/不安定狭心症による入院」発生リスクは、PCI「追加」群で著明かつ有意に減少していた。
すなわち、「非追加」群に対するハザード比(HR)は0.11(95%信頼区間[CI]:0.03-0.36)、発生率は「追加」群が0.4%、「非追加」群で3.4%だった(なお試験設計時に想定していたイベント発生率は、「追加」群が8.5%、「非追加」群で12.0%である)。この両群間の差は、7年間観察できた131例で比較しても維持されていた。
ただしイベントの内訳を見ると、2年間の「心臓死」と「標的血管MI」発生率は、PCI「施行」群で低いものの有意差とはならなかった。群間差はいずれも0.6%である。
一方、「心筋虚血を端緒とする標的血管血行再建」と「狭心症増悪/不安定狭心症による入院」には有意差がついた。2年間の発生リスク差は前者が2.3%、後者で1.4%だった。
・安全性
大出血の2年間発生率はPCI「追加」群が0.6%、「非追加」群も0.5%で差はなかった。
パネルディスカッションでは「本当に不安定プラーク例が選ばれているのか」との問いが出された。パネラーはグレーIVUSを用いた「不安定性」評価の信頼性に疑問を感じているようだった。Park氏は直接これに答えなかったが、プラーク不安定性評価のモダリティ選択を現場に任せた点を、本試験の限界の一つとして挙げていた。
本試験は以下から資金提供を受けた。The CardioVascular Research Foundation、Abbott、Yuhan Corp、CAH-Cordis、Philips、Infraredx、Nipro company。
また報告と同時に論文がLancet誌ウェブサイトで公開された。