SGLT2阻害薬による心保護作用の一機序と考えられている血中ケトン体濃度上昇だが [Cowie MR, et al. 2020]、心不全(HF)や心血管系(CV)疾患がない例ではCV転帰を増悪させるようだ。4月6日から米国アトランタで開催された米国心臓病学会(ACC)学術集会において、ウェイクフォレスト大学(米国)のParag Anilkumar Chevli氏が、大規模観察データの結果として報告した。
Chevli氏らが解析対象としたのは、アテローム動脈硬化性CV疾患(ASCVD)、HFいずれも有さない英国住民9万987名である。自主参加型コホート研究 "UK Biobank" から抽出した。平均年齢は56.4歳、女性が54.7%を占めた。
これら9万987名の、観察開始時のケトン体量(NMRスペクトロスコピーで評価)と、その後のASCVD、HF発症リスクを比較した。比較にあたっては、以下の背景因子を補正した(年齢、性別、人種、経済状況、肥満度、糖尿病の有無、喫煙の有無、血圧、総コレステロール、HDL-C、スタチン服用の有無、腎機能、アルコール摂取、身体活動性)。
平均13.8年間の観察で、6.2%がASCVDを、3.2%がHFを発症した。観察開始時ケトン体量10倍増に伴うハザード比は、ASCVDが1.32(95%信頼区間[CI]:1.19-1.47)、HFで1.50(95%CI:1.30-1.74)だった。
また開始時ケトン体量三分位数で分けても、「最低」群に比べ「第二」「最高」群ではASCVD、HFとも発生率が高い傾向を認めた(検定不記載)。
Chevli氏らは、ケトン体量をCV高リスク群のスクリーニングに用い得るのではないかと考察している。なおCV1次予防例におけるケトン体量上昇に伴うCVイベント多発は、米国大規模コホートからも報告されている [Shemesh E, et al. 2023] 。
本研究はCOIに関する開示がなかった。