心房細動(AF)に対するアブレーションに歯周病の評価/治療を加えると、AF再発リスクは低下するかもしれない。広島大学の宮内俊介氏らが観察研究の結果として4月10日、Journal of the American Heart Association誌で報告した。これまでも歯周病がアブレーション後のAF再発リスクだとする報告はあったが [Tashiro A, et al. 2023] 、歯周病「治療」が再発リスクに与える影響を調べた研究はこれが初めてだという。
今回の解析対象は、広島大学病院でAFアブレーションを実施した288例である。アブレーション施行予定だった連続330例中、施行前日の歯周病検査に同意し、実際にアブレーションを施行後、6カ月以上追跡できた例が解析された。平均年齢は68歳、男性が66%を占めた。AFは57%が発作性だった。
これら288例は、歯周病評価の結果を示された上で、重症度にかかわらず全例が歯周病治療を推奨された(受けるかどうかは自由)。歯周病治療(非外科的)の実施期間は、アブレーション施行後3カ月以内とした。
そのうえで検討されたのは、アブレーション施行前「歯周病重症度」、また施行後「歯周病治療実施の有無」が、「アブレーション後AF再発」リスクに及ぼす影響である。
AF再発は3カ月のblanking period後のみをカウントした。また歯周病重症度評価にはPISA(歯周病炎症部面積)値を用いた(高値ほど重症)。
・AF再発率
アブレーション施行後3~12カ月間に18.8%がAFを再発した。
・歯周病重症度とAF再発
アブレーション施行後3~12カ月間のAF「再発」例は「非再発」例に比べ、アブレーション前PISA値が有意に高かった(456.8 vs. 277.7 mm2)。
またPISAを ROC曲線カットオフ値「615 mm2」の上下で二分し、その「高値」群は「低値」群に比べ平均507日間のAF再発率が有意に高かった。
・歯周病治療とAF再発
歯周病重症度の高低により、歯周病治療がAF再発に及ぼす影響は異なった。すなわち、アブレーション前PISA「高値」群は、歯周病治療「実施」例で「非実施」例に比べ、アブレーション後AF再発率が有意に低下していた。一方PISA「低値」群では、歯周病治療に伴うAF再発の減少は認めなかった。
宮内氏は歯周病がAFリスク上げる機序として、「炎症」のみならず「器質的異常」惹起の可能性を挙げていた。
本研究は日本学術振興会から資金提供を受けた。