SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬(RA)は、心腎保護作用が証明されている数少ない血糖降下薬である。加えてその保護作用は、両剤の併用によりさらに増強される可能性もあるようだ。大規模観察研究の結果として、バーミンガム大学(英国)のNikita Simms-Williams氏らが4月25日、British Medical Journal誌で報告した。ただし対象の8割以上が「BMI≧30kg/m2」という集団での知見である。
解析対象の母集団は、英国在住でプライマリケアにてSGLT2阻害薬(13万9412例)かGLP-1-RA(3万6219例)を開始した17万5000例強である。全例2型糖尿病の診断を受けており、GLP-1-RAでは減量目的と思われた例が除外されている。いずれも英国プライマリケア医データベースである "UK CRRD" から抽出された。
まずこれらを以下の2集団に分けた。すなわち、
(1)SGLT2阻害薬開始後にGLP-1-RAを追加併用した「SGLT2阻害薬・GLP-1-RA」2剤併用群と、追加併用のなかった「SGLT2阻害薬」単剤群
(2)GLP-1-RA開始後にSGLT2阻害薬を追加した「GLP-1-RA・SGLT2阻害薬」2剤併用群と、追加併用のなかった「GLP-1-RA」単剤群
である。
両集団とも「2剤併用」群に背景因子を揃える形でもっぱら「単剤」群から患者を除外した(傾向スコアマッチ)。最終的に残ったのは、「SGLT2阻害薬単剤群 vs. 2剤併用群」の1万7884例(母集団の12.8%)と「GLP-1-RA単剤群 vs. 2剤併用群」の1万3392例(同37.0%)である。
そのうえで2剤併用と単剤による心腎保護作用を、これら2集団で別々に比較した。
(1)SGLT2阻害薬単剤群 vs. 2剤併用群
対象の平均年齢は58歳、BMIは81%が「≧30kg/m2」だった。
2剤併用群は、8.4カ月(中央値)という観察期間にもかかわらず、単剤群に比べ「CV死亡・心筋梗塞・脳梗塞」(MACE)リスクは相対的に29%、有意に低下していた。ハザード比(HR)は0.71(95%信頼区間[CI]:0.52-0.98)、発生率は7.6 vs. 10.7/1000人年である。
一方「重篤腎イベント」リスクは両群間に有意差を認めなかった(HR:0.67 [0.32-1.41]、1.4 vs. 2.0/1000人年)。
(2)GLP-1-RA単剤群 vs. 2剤併用群
対象の平均年齢は57歳、BMIは87%が「≧30kg/m2」だった。
2剤併用群は、9,0カ月(中央値)の観期間後、単剤群に比べてMACEリスクが相対的に30%の有意低値となっていた(HR:0.70 [0.49-0.99]、7.0 vs. 10.3/1000人年)。
「重篤腎イベント」も同様で、2剤併用群では単剤群に比べ、57%の有意な相対リスク低下を観察した(HR :0.43 [0.23-0.80]、2,0 vs. 4.6/1000人年)。
Simms-Williams氏らはこの結果を、SGLT2阻害薬とGLP-1-RAの心腎保護作用が相加的に作用した結果だと考察している。
本研究はカナダ保健研究所から資金提供を受けた。