一手目 :〈尿路閉塞(両側水腎症)がある場合〉閉塞起点に合わせて尿道カテーテル留置,膀胱瘻造設,腎瘻造設,尿管ステント留置などを行い,可及的速やかに尿路閉塞を解除
二手目 :〈腎前性と腎性の鑑別が困難な場合〉明らかな体液過剰がなければ,診断的治療として輸液負荷を実施。十分な輸液を行っても尿量増加が得られなければ中止し,フロセミド注(フロセミド)を静注(1.0mg/kgなど)
三手目 :〈体液過剰による肺水腫を呈している場合〉酸素投与,非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)や,血管拡張薬投与〔ニトログリセリン注(ニトログリセリン)0.05~0.1μg/kg/分から開始〕,フロセミド投与(二手目と同様),サムタスⓇ注(トルバプタンリン酸エステルナトリウム)1回16mg 1日1回(1時間かけて点滴静注)を行い,状況に応じ気管内挿管,人工呼吸器管理に移行
四手目 :〈血清カリウム値6.0mEq/L以上の高カリウム血症を呈する場合〉心電図を確認し,T波増高,PR間隔延長,P波消失,QRS幅拡大などの異常所見がある場合は速やかに以下の処置を行う(症例に合わせて選択)
①カルチコールⓇ注8.5% 5mL(グルコン酸カルシウム)1回1アンプル(緩徐に静注),繰り返し投与も可能
②グルコース・インスリン療法〔50%ブドウ糖50mL+速効型インスリン5単位(緩徐に静注)〕
③フロセミド投与(二手目と同様)
④代謝性アシドーシスがあり体液過剰がなければ,メイロンⓇ静注8.4%(炭酸水素ナトリウム)〔必要量(mL)=不足塩基量(mEq/L)×0.2×体重(kg)〕
⑤陽イオン交換薬〔ロケルマⓇ懸濁用散(ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物)1回10g 1日3回3日間〕などを施行
五手目 :〈上記の治療に抵抗性の場合〉透析
患者の循環動態が不安定で昇圧薬を要するような場合は,集中治療室で持続的な透析が行われ,循環動態が安定している場合は間欠的な透析で対応する。
緊急透析が必要となる可能性があるが,自施設での対応が困難な場合は,専門の医療施設へ直ちに搬送する。
【文献】
1) Kidney Disease:Improving Global Outcomes(KDIGO)Acute Kidney Injury Work Group:Kidney Int Suppl. 2012;2:1-138.
2) AKI(急性腎障害)診療ガイドライン作成委員会, 編:日腎会誌. 2017;59(4):419-533.
渡辺裕輔(埼玉医科大学国際医療センター血液浄化部・腎臓内科准教授)
岡田浩一(埼玉医科大学腎臓内科教授)