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急性腎障害(AKI)[私の治療]

No.5220 (2024年05月11日発行) P.38

渡辺裕輔 (埼玉医科大学国際医療センター血液浄化部・腎臓内科准教授)

岡田浩一 (埼玉医科大学腎臓内科教授)

登録日: 2024-05-09

最終更新日: 2024-05-07

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  • 急性腎障害(acute kidney injury:AKI)とは,急激な腎機能低下をきたす病態である。AKIの診断にはKDIGO基準(①48時間以内に血清クレアチニン値0.3mg/dL以上の上昇,②7日以内に血清クレアチニン値が基礎値から1.5倍以上上昇,③尿量0.5mL/kg/時が6時間以上持続,①~③の1つを満たす)が用いられる1)2)。AKIに対しては,原因に応じた治療介入および合併症への対処を速やかに行うことが求められ,重症のAKIでは緊急透析が必要となる場合がある。

    ▶診断のポイント

    AKIの原因による分類として腎前性,腎性,腎後性の区分が広く用いられている。

    腎前性AKIは,血管内脱水や低血圧などにより腎灌流が低下した状態であり,腎実質の器質的障害を伴わないものと定義される。腎灌流の改善が得られれば,腎機能は速やかに回復する。

    腎性AKIは腎実質の器質的障害であり,障害部位により血管障害,糸球体障害,間質性腎炎,急性尿細管障害(acute tubular injury:ATI)に大別される。ATIはさらに虚血性と腎毒性にわけられる。虚血性ATIは腎前性AKIが高度かつ遷延した場合に生じる。尿生化学検査や尿沈渣所見などから腎前性と腎性の鑑別を行うが,実臨床では輸液負荷に対する反応性が重要である。腎性AKIでは必要に応じて,確定診断のために腎生検が行われる。

    腎後性AKIは尿路閉塞が原因で生じる。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    AKIの原因に対する治療とともに,AKIに伴う合併症への対処が必要になる。AKIの致命的な合併症として,体液過剰による肺水腫,高カリウム血症による致死性不整脈,代謝性アシドーシス,尿毒症症状などがあり,それらが薬物療法に抵抗性の場合は透析の絶対適応となる。

    AKI患者への具体的な対応としては,①血清クレアチニン値や尿量のモニタリングを継続する,②バイタルサイン,酸素飽和度,心電図,血清カリウム値,重炭酸イオン濃度なども適宜評価する,③適切な体液量管理を行い,腎灌流を維持する,④可能な限り腎毒性薬剤を中止し,腎排泄性薬剤は投与量を減量するか使用を避ける,⑤循環動態が不安定な場合は,集中治療室への入室を考慮する,などが必要である。

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