非弁膜性心房細動(AF)へのリズムコントロール(洞調律維持療法)は、21世紀初めのランダム化比較試験(RCT)において("AFFIRM”、"AF-CHF")、期待に反し、心血管系(CV)転帰をレートコントロール(心拍数調節療法)に比べ改善しなかった。しかし「リズム」コントロールそのものの進歩に伴い、状況は異なってきたようだ。最新RCTメタ解析の結果、明らかになった。チューリッヒ大学病院(スイス)のStefanos Zafeiropoulos氏らが5月8日、JACC Clinical Electrophysiology誌で報告した。
解析対象とされたのは、AFに対する「リズム」コントロールと「レート」コントロールによる臨床転帰を比較したRCT 18報である。参加例総数は1万7536例。平均年齢は68.6歳、37.9%が女性だった。追跡期間平均は28.5カ月間、AFは31.9%が発作性だった。
「リズム」群に占めるカテーテル・アブレーションの割合は8.9%で、すべて焼灼による肺静脈隔離だった。また抗不整脈薬はアミオダロン、ドロネダロンに限定した試験が3報ずつ、薬剤限定なしの試験が6報だった。一方、「レート」群で使用されていた薬剤はβ遮断薬やベラパミル、ジルチアゼム、ジゴキシンである。
これらRCT 18報のデータを併合し、「リズム」群と「レート」群間で「CV死亡」(1次評価項目)、「総死亡」「脳卒中」「HF入院」リスクなどを比較した。
・CV死亡(13試験、1万4793例)
「リズム」群は「レート」群に比べ「CV死亡」リスクが有意に低値となった。ハザード比(HR)は0.78(95%信頼区間[CI]:0.62-0.96)である。ただし試験間に結果に有意なバラつきが認められた(P=0.04)。
・脳卒中(13試験、1万6235例)
「脳卒中」も同様に「リズム」群で(かろうじて)有意なリスク低下を認めた(HR:0.80、0.64-0.998。P =0.43)。
・心不全入院(6試験、1万0390例)
「心不全入院」も同様で、「リズム」群におけるHRは0.80 (95%CI:0.69-0.94)だった(P =0.18)。
・総死亡(17試験、1万7422例)
一方、総死亡リスクは「リズム」群で減少傾向を認めるも、有意差とはならなかった(HR:0.86、0.73-1.02。P =0.06)。
本メタ解析の結果が、21世紀当初のRCTと逆の結果になった理由としてZafeiropoulos氏らは、「リズム」コントロールによる洞調律回復率の改善を指摘している。アブレーションの導入もその1つである。その上で同氏らは、AF治療における「リズムコントロールへのパラダイムシフトが進行中だ」と記している。
本解析の筆頭著者、責任著者とも開示すべき利益相反はないとのことだ。