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骨髄腫腎,M蛋白血症に伴う腎障害[私の治療]

No.5223 (2024年06月01日発行) P.49

乳原善文 (虎の門病院腎センター内科)

登録日: 2024-05-30

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  • 骨髄腫腎は円柱腎症(cast nephropathy)と言い,実際はmyeloma cast nephropathyと同義語であり,M蛋白を有する患者の中で多発性骨髄腫と診断された症例の腎障害である。一方で,M蛋白が検出されても骨髄検査で骨髄腫細胞が10%未満で骨髄腫と診断できない場合に,monoclonal gammopathy of undetermined significance(MGUS)が診断される。どちらに診断されるかで治療法が異なってくる。M蛋白は血中や尿中で検出され,血中ではIgG,IgA,IgMまたはIgDのheavy chainにkappaまたはlambdaのlight chainで構成される。尿中で検出された場合には,その特性によりBence Jones protein(BJP)がつくが,IgG,IgA,IgM,IgDが微量で検出されない場合には,BJP-kappa or lambdaとして報告される。

    ▶診断のポイント

    M蛋白が陽性と診断されkappaとlambdaの比が極端にかけ離れている(kappa/lambda比が100以上を呈した)場合に,骨髄腫腎が診断され治療が選択される。一方でkappa/lambda比が低く骨髄検査で確証が得られない場合には,MGUSに伴う腎症として分類され,その後の治療は症例に応じて異なる。

    両者の鑑別に腎生検は有用である。尿細管内にcastがみられPAS染色陰性でHE染色でredに染まり,Masson trichrome染色ではred and blueに染まりcast内に形質細胞が確認され,さらに免疫染色(免疫蛍光あるいはパラフィン標本)でkappaとlambdaのどちらかが優位に染色された場合にmyeloma cast nephropathyの診断が確定する。頻度は低いもののCongo red染色あるいはわが国ではDFS染色が代用され,redに染まる領域が観察された場合にはアミロイド合併骨髄腫腎と診断される。

    臨床像も参考になる。骨髄腫腎では数週間の単位で急速に進行する腎機能低下と,蛋白尿および高カルシウム血症がみられる。尿中蛋白分画検査は鑑別に有用である。尿蛋白検査でアルブミン分画が10%以下の場合にはM蛋白BJPによる蛋白尿であるが,アルブミン分画が30~40%以上の場合には何らかの糸球体病変〔アミロイドの沈着あるいは軽鎖沈着症(light chain deposition disease)〕の存在が示唆される1)

    アミロイドの合併のない純粋な骨髄腫腎では,多発性骨病変(骨髄腫細胞浸潤による)が同時にみられ,骨病変精査の過程で骨髄腫腎が診断されることが多い。一方,アミロイドの合併のある骨髄腫腎では,高度のアルブミン尿を呈するネフローゼ症候群を反映した下腿浮腫や体重増加が出現し,その精査の過程で診断されることが多く腎機能低下は目立たない。

    アミロイド合併の有無により治療反応性も異なる。アミロイドの合併のない場合には治療反応性が良好で,腎機能の改善と長期生存が得られているが,アミロイド合併のある場合には腎予後のみならず生命予後も不良であることが,今後の問題点である。

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