尿細管性アシドーシスのほとんどは遠位型で,アニオンギャップ(anion gap:AG)正常の代謝性アシドーシス,アシデミアにもかかわらず早朝尿pH>5.5と低くないこと,尿AG(尿Na+尿K−尿Cl)>0から診断します。血液ガス分析の代わりとして,血清Na-血清Cl<36からAG正常代謝性アシドーシスを推定することもでき,日常診療では有用です。
糸球体病変では膜性増殖性糸球体腎炎が最多であり,クリオグロブリンや低補体血症にも留意すべきです。前述のSjögren Big Data Projectによれば,SSの腎病変に関連する因子としてクリオグロブリン,低補体血症,抗SS-A/Ro抗体,抗SS-B/La抗体が挙げられ3),このようなSS症例では特に腎病変の合併に留意すべきです。
上述した病態をみた場合にSSを疑うことと要約されますが,この点に関してヨーロッパリウマチ学会SSタスクフォースが作成したSS早期診断の推奨論文4)が参考になります。腎臓内科医がSSを疑うべき状況として無症候の遠位型尿細管性アシドーシス,低K血症性四肢麻痺,骨軟化症,血栓性血小板減少性紫斑病,また泌尿器科医が疑うべき状況として尿路結石,腎臓石灰化,間質性膀胱炎が挙げられています。乾燥症状でなく,これらの臓器病変からSSを診断することこそ腎臓専門医の力が試される場面と言えます。
【文献】
1)Retamozo S, et al:Clin Exp Rheumatol. 2021;39 Suppl 133(6):166-74.
2)Lin CY, et al:J Autoimmun. 2020;113:102483.
3)Brito-Zerón P, et al:Clin Exp Rheumatol. 2018;36 Suppl 112(3):102-12.
4)Brito-Zerón P, et al:Expert Rev Clin Immunol. 2016;12(2):137-56.
【回答者】
鈴木康倫 福井赤十字病院腎臓・泌尿器科副部長/膠原病内科