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【文献 pick up】「くせ毛ケア」後の急性腎障害報告相次ぐ―KI Rep、AJKD、NEJM誌

宇津貴史 (医学レポーター)

登録日: 2024-06-20

最終更新日: 2024-06-19

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美容室などで施行される「クセ毛ケア」後に一過性ながら急激な腎機能低下が起きていることが、相次いで報告された。原因と想定されているのは、施術で用いられる「グリオキシル酸」だ。この「グリオキシル酸」を用いた頭髪ケアはわが国でも実施されており、またセルフケア製品としても販売されている。

・くせ毛ケア後に「悪心・嘔吐」と「腹痛」 

最新の報告は、ジュネーブ大学病院(スイス)のAurélie Huber氏らによるKidney International Reports誌、6月10日掲載論文である。

症例は外来受診の42歳女性。主訴は「脱力」「悪心・嘔吐」「右側腹痛」だった。発熱を伴わない下痢も2日間続いたという。腎傷害および血清クレアチニン(Cr)値上昇を認めたため精査したところ、腎生検にてシュウ酸カルシウムの沈着と非炎症性の間質浮腫を認めた。

今回の症状はサロンにおける「くせ毛ケア」施術直後に出現していた。そのため「くせ毛ケア」クリームに含まれる「グリオキシル酸」が原因だとHuber氏らは考察している。

・グリオキシル酸使用「くせ毛ケア」後に急性腎障害を呈した26

というのも2023年、グリオキシル酸含有「くせ毛ケア」後に急激な腎機能低下を来した26例が、中東から報告されているためである。腎生検を実施した7例中6例は「急性シュウ酸腎症」と診断された [Bnaya A, et al. AJKD 2023] 。

主訴の最多は「悪心・嘔吐」(96%)、次いで「腹痛」(46%)、「頭皮湿疹」(38%)だった。腎機能低下の多くは一過性だったが、26例中3例は一時的に透析が必要となった。Bnaya氏らは「経皮吸収されたグリオキシル酸が、腎へのシュウ酸カルシウム沈着をきたすのではないか」と考えている。

・くせ毛ケア用クリーム塗布マウスで腎機能低下と尿中シュウ酸カルシウム結晶

事実、その仮説を強く支持するデータが本年3月、New Engl J Med誌(通信欄)で報告されている。著者はマルセイユ・コンセプション病院(フランス)のThomas Robert氏ら。Robert氏らが報告したのは「くせ毛ケア」施術を3回受け、3回とも施術当日に急激な血清Cr上昇を呈した26 歳女性である。主訴は「嘔吐」「下痢」「発熱」「背痛」だった。腎機能は低下していたが、画像診断上の異常は認めなかった。また腎機能はすみやかに回復した。

同氏らも「グリオキシル酸」の関与を疑い、グリオキシル酸含有「くせ毛ケア」クリームをマウス背部に塗布した。すると翌日には血清Crの著増を認め、尿中にはシュウ酸カルシウム結晶が観察された。一方対照クリーム群では、このような変化は見られなかった。Robert氏らはこの結果を、グリオキシル酸とシュウ酸カルシウム腎沈着の因果関係を示すものだと考察している。その上でかかる製品の市販をやめるべきではないかと提案する。

また冒頭の症例を報告したHuber氏らは、ヘアケア製品に限らず、グリオキシル酸を含有するコスメ製品全般で、注意が必要だとしている。

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