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【文献 pick up】慢性扁桃炎「既往」でその後のIgA腎症リスク3倍増?―AJKD誌

宇津貴史 (医学レポーター)

登録日: 2024-06-28

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IgA腎症の発症には免疫学的機序の関与が想定されているが、慢性扁桃炎は「既往」があるだけで「非既往」例に比べ、IgA腎症発症リスクを3倍近く押し上げている可能性がある。わが国における大規模データ解析の結果として、慶應義塾大学の中山尭振氏らが6月19日、American Journal of Kidney Disease誌で報告した。 なおIgA腎症の我が国における発症率は「10 万人当たり 3.94.5 /年」と推定されている [エビデンスに基づくIgA腎症 診療ガイドライン2020] 。

【対象】

今回の解析対象は日本にて健康診断を受診した、IgA腎症既往歴のない4311393名である。喫煙とアルコール摂取状況、身体活動データがない例は除外されている。全例、レセプト・健診情報を収集した民間データベースから抽出された。年齢中央値は44歳、58%が男性だった。また12842例(0.3%)に慢性扁桃炎既往があった。

【方法】

これら4311393名を対象に、「慢性扁桃炎罹患歴の有無」と「その後のIgA腎症」発症リスクの関係を調べた。

【結果】

・IgA腎症発症率

1089日(中央値)の間に、全体では2653例(0.06%)がIgA腎症と診断された(1.75/1万人年)。

・慢性扁桃炎とIgA腎症リスク

慢性扁桃炎の既往の有無で分けて比較すると、慢性扁桃炎「既往」例のIgA腎症発症率は「非既往」例よりも有意に高かった(4.93 vs. 1.74/1万人年)。また諸因子補正後のIgA腎症発症リスクを比較しても、慢性扁桃炎「既往」例は「非既往」例に比べ3倍近く有意に高くなっていた(ハザード比:2.7295%信頼区間[CI]:1.794.14)。上記結果は複数の感度分析でも同様だった。なお「性別による差」は観察されなかった。

【考察】

中山氏らはまず、わが国おける慢性扁桃炎後のIgA腎症リスク増加はすでに、症例・対照研究でも示されていたと指摘 [Wakai K, et al. 2002] 。その上で、慢性扁桃炎「既往」例では、健康診断における尿所見異常を、軽度であっても過小評価しないことが肝要だと考察している。

本研究は厚生労働省と教育・文部科学省からグラントを受けた。

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