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■NEWS【ADA報告】2型DM合併高リスクCKDに対するGLP-1-RAの心腎保護作用はSGLT2阻害薬併用に影響を受けるのか?―RCT "FLOW" 追加解析

登録日: 2024-07-02

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GLP-1-RAのセマグルチドは、2型糖尿病(DM)合併高リスク慢性腎臓病(CKD)例に対する心腎イベント抑制作用が、ランダム化比較試験(RCT "FLOW" で確認されている (NEJM 2024) 。ただし少数例だがSGLT2阻害薬併用例のみで比較すると、プラセボに比べ心腎イベントは若干の増加傾向が見られた(ハザード比:1.0795%信頼区間[CI]:0.691.67)。

このSGLT2阻害薬併用の有無による影響を検討した追加解析が、6月21日から米国オーランドで開催された米国糖尿病学会(ADA)学術集会にて、エアランゲン大学(ドイツ)のJohannes F. Mann氏により報告された。減弱しているとすれば腎保護作用のようだ。

FLOW試験[既報分

【対象、方法】

FLOW試験の対象は、心腎リスクの極めて高い2型DM合併CKD 3533例である。セマグルチド群とプラセボ群にランダム化され、二重盲検法で3.4年(中央値)観察された。

【結果】

その結果、1次評価項目である「心腎イベント」(「腎不全」「28日以上持続する50%以上のeGFR低下」「腎関連死亡」「CV死亡」)リスクはセマグルチド群でプラセボ群に比べ相対的に24%、有意に低下していた(治療必要数:23)。

FLOW試験 ADA報告(SGLT2阻害薬併用の有無別解析の詳細)

【結果】

・心腎イベント(1次評価項目)

1次評価項目である上記「心腎イベント」のリスクは、試験開始時にSGLT2阻害薬を「非併用」の2983例では、セマグルチド群でプラセボ群に比べ相対的に27%、有意に低下していた(発生率:19.5 vs. 22.2%)。

一方、SGLT2阻害薬「併用」の550例で比較すると、逆に、セマグルチド群でプラセボ群に比べ相対的に7%だが相対リスクの増加傾向を認めた(発生率:14.8 vs. 14.4%)。両群の発生率曲線は、試験終了までほぼ乖離することなく推移した。

ただし交互作用を調べると、セマグルチドによる心腎イベント抑制作用はSGLT2阻害薬の有無に有意な影響を受けていなかった(交互作用P=0.109)。

・1次評価項目内訳

Mann氏はSGLT2阻害薬併用別の上記イベント内訳を明らかにしなかった。そこで学会での発表と同時に公表されたNat Med誌から引くと、SGLT2阻害薬を併用しない例ではセマグルチドによる腎保護作用に減弱傾向が見られた。

すなわち「腎不全」の対プラセボ群のハザード比(HR)は、SGLT2阻害薬「併用」例で1.1895%CI0.642.19)、「非併用」例なら0.7895%CI0.610.99)だった。同様に「28日以上持続する50%以上のeGFR低下」のHRも、「併用」例で1.3095%CI0.762.26)、「非併用」例で0.6695%CI0.530.83)だった(腎疾患死亡は少数のため比較できず)。

対照的に「CV疾患死」は、SGLT2阻害薬の「併用」例でもセマグルチド群における対プラセボ群のHR0.6895%CI0.281.57)、「非併用」例でも0.7195%CI0.560.91)だった。

・SGLT2阻害薬サイドから見たメタ解析

なお同セッションにおいて、ワシントン大学(米国)のKatherine R Tuttle氏は、SMART-C最新メタ解析から、上記の結果とは逆に、GLP-1-RA併用がSGLT2阻害薬の腎保護作用に与える影響を示した。SMART-Cは、プラセボ対照SGLT2阻害薬RCTを患者レベルデータで共有・メタ解析する連合体である。

それによれば、対象はすべて心疾患例のRCTだが、SGLT2阻害薬群における腎イベントのプラセボ群に対するHRは、試験開始時GLP-1-RA「併用」(2984例)で0.6595%CI0.460.94)、「非併用」(7万0122例)でも0.6795%CI0.620.72)だった。

【考察】

質疑応答では、SGLT2阻害薬併用の有無の影響を交互作用の有無だけで判断して良いかという声が上がった。SGLT2阻害薬併用例が550例と少なかったため、「検出力不足」への懸念があるという。これに対し壇上討論者からは、RCT "AMPLITUDE-O" [Neves JS, et al. 2023] でも、GLP-1-RAの心腎保護作用はSGLT2阻害薬併用の有無に影響を受けていなかった旨、コメントがあった。にもかかわらずフロアからは、SGLT2阻害薬併用の影響の有無についての、さらに詳細な解析を求める声が続いた。

本試験はNovo Nordiskから資金提供を受けて実施された。同社はプロトコール作成に参加し、統計解析を担当(第三者が検証)、論文草稿に対するレビュー/アドバイスも行った。ただし内容・出版に関する最終決定権は原著者たちに留保されていた。なお原著者中4名は同社所属だった。

SGLT2阻害薬併用の影響を検討した論文は、報告と同時にNat Med誌Webサイトで公開された。

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