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一次性巣状分節性糸球体硬化症[私の治療]

No.5228 (2024年07月06日発行) P.37

山縣邦弘 (筑波大学医学医療系臨床医学域腎臓内科学教授)

登録日: 2024-07-04

最終更新日: 2024-07-02

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  • 巣状分節性糸球体硬化症(focal segmental glomerulosclerosis:FSGS)は,病理組織学的に,巣状,分節性の糸球体硬化病変を認める疾患で,突然のネフローゼ症候群で発症する一次性,様々な原因で光学顕微鏡上FSGS病変を呈する二次性,遺伝子異常により家族性にFSGSを呈する遺伝性に分類される。病勢が続けば糸球体硬化がしだいに広がり,糸球体脱落から末期慢性腎不全に進展する予後不良な疾患である。本稿では一次性を対象とする。

    ▶診断のポイント

    全身性浮腫などにより突然発症し,大量の蛋白尿と低蛋白血症,脂質異常症を伴う。蛋白尿は低選択性であり,グロブリンなどの大分子の蛋白の尿中への漏出が多く,血尿・高血圧を伴うことが多い。腎生検を実施することにより,FSGS病変を検出する。FSGSは形態的特徴をもとにNOS(not otherwise specified)variant,collapsing variant,tip variant,perihilar variant,cellular variantの5つに分類される。

    発症形式は微小変化型ネフローゼ症候群と同様に突然の大量の蛋白尿を呈し,低蛋白血症が高度であれば,全身性浮腫とともに胸水・腹水を認める。

    腎生検にて当初,微小変化群と診断されても,ステロイド治療による反応性が不良なことから,再度,腎生検を実施した結果,FSGSと診断される場合もある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    FSGSは,糸球体のポドサイトの何らかの障害を端緒に発症する。その結果,ポドサイト周囲の滲み出し,ポドサイトの糸球体係蹄壁からの脱落,露出した糸球体係蹄のボウマン囊への癒着などにより,糸球体の分節性硬化病変が形成される。ポドサイド障害の機序として,ポドサイトの構成蛋白の先天的異常,ポドサイトへのウイルス感染と並んで,一次性FSGSでは血中のFSGS発症因子の存在が以前から指摘されている。また,様々な二次性FSGS病変の形成機序として,糸球体内圧の上昇から糸球体過剰濾過をきたし,巣状分節性糸球体硬化病変をきたすとも言われており,過剰濾過の是正が糸球体障害の進展を抑制するものと考えられている。これらのポドサイト障害を発する因子を除去することが本症の蛋白尿の軽減,治療につながる。

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