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【文献 pick up】肥満関連がん抑制作用をGLP-1-RA、メトホルミン、インスリンで比較、軍配はメトホルミンに―大規模観察研究/ JAMA Netw Open誌

宇津貴史 (医学レポーター)

登録日: 2024-07-16

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「過剰な体脂肪に伴う発がんリスク上昇」と「意図的減量による発がんリスク低減の可能性」が指摘されている [Lauby-Secretan B, et al. 2016] 。そのため肥満に関連するとされる13のがんに対して、減量作用を有するGLP-1-RAによる「肥満関連がん発生抑制」が期待された。しかしインスリンとの比較では多くのがんを抑制していたものの、メトホルミンを上回る抑制作用は観察されず、逆に腎がんリスクはメトホルミンよりも高くなっていた。ケース・ウェスタン・リザーブ大学(米国)のLindsey Wang氏らが7月5日、JAMA Network Open誌で報告した。

【対象】

解析対象の母体は、米国在住で「肥満関連がん」の履歴がなく、GLP-1-RAかインスリン、メトホルミンを処方されていた2型DM 1651452例である。全国的な電子健康記録(EHR)から抽出した。平均年齢は59.8歳、女性が47.0%を占めた。「肥満関連がん」とは以下の13臓器の少なくともいずれかに発生したがんを指す。

※食道、乳房、大腸、子宮、胆嚢、胃、腎、卵巣、膵臓、甲状腺、肝細胞、髄膜、骨髄(多発性)

【方法】

上記1651452例からまず、GLP-1-RAのみ処方(インスリンやメトホルミンの併用なし:149690例)とGLP-1-RAを併用していないインスリンのみ処方(1044745例)とメトホルミンのみ処方(856160例)を抽出した。そのうえで傾向スコアを用いて背景因子をマッチできた集団間で、肥満関連がん発生リスクを比較した。観察期間は最長15年である。

比較された群の詳細は以下の通り。

・「GLP-1-RA・非メトホルミン群」(3万2365例) vs. 「メトホルミン・非GLP-1-RA群」(856160例)

・「GLP-1-RA・非インスリン群」(48983例)vs. 「インスリン・非GLP-1-RA群」(1044745例)

【結果】

・GLP-1-RA vs. メトホルミン

その結果、「GLP-1-RA・非メトホルミン群」と「メトホルミン・非GLP-1-RA群」間では、腎がんを除き「肥満関連がん」発生リスクに有意差はなかった。

唯一の例外だった「腎がん」リスクは、「GLP-1-RA・非メトホルミン」群で有意に高かった(ハザード比 [HR]1.5495%信頼区間[CI]:1.271.87。発生率は0.78 vs. 0.55%Number Needed to Harm435)。

・GLP1-RA vs. インスリン

他方「インスリン・非GLP-1-RA」群との比較では、「GLP-1-RA・非インスリン」群において「乳がん」「胃がん」「甲状腺がん」を除くすべての「肥満関連がん」で発生リスクは有意に低値となっていた。腎がんHR0.7695%CI0.640.91)である(発生率は0.46 vs. 0.59%Number Needed to Treat770

【考察】

Wang氏らによれば、GLP-1-RAに伴う腎がんリスク上昇はこれまでに報告されていないという。そのため同氏らは、さらなる研究が必要ではあるが、日常臨床では継続的なモニタリングが必要だろうとしている。

本研究は米国国立がん研究所、米国がん学会などから資金提供を受けた(製薬企業からの供与はなし)。

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