糖尿病関連腎臓病(diabetic kidney disease:DKD)は透析導入原疾患の第1位を占める。DKDの進展には高血糖だけでなく,高血圧,肥満,脂質異常症,喫煙などが関与するため,これらリスク因子を包括的に管理する集約的治療が求められる。従来,糖尿病による腎障害は蛋白尿を呈すると考えられてきたが,近年ではアルブミン尿・蛋白尿を伴わずに腎機能低下のみをきたす症例が増加している。
典型的な特徴(5~10年以上の糖尿病罹患歴,血尿を伴わないアルブミン尿・蛋白尿,網膜症)がそろっていれば,腎生検を行わずにDKDとして対応する。アルブミン尿・蛋白尿を伴わない症例についても,糖尿病や高血圧以外の原因を示唆する所見がなければ,臨床的にDKDと診断することが多い。
一方,短い糖尿病罹患歴,網膜症が存在しないこと,血尿,急な蛋白尿増加や腎機能低下がみられる場合は,DKD以外の腎疾患の可能性を考え,腎生検を検討する。
血糖管理の目標はHbA1c 7.0%未満が目安とされているが,実際には患者背景(年齢,併存疾患,低血糖リスクなど)を考慮して個別に設定する必要がある。経口血糖降下薬のうち,SGLT2(sodium-glucose cotransporter 2)阻害薬には,血糖降下とは独立した腎保護効果があることが示されており,積極的な使用を検討する。また,最近GLP-1(glucagon-like peptide-1)受容体作動薬(オゼンピックⓇ)にも腎保護効果があることが報告された1)。
レニン-アンジオテンシン系(renin-angiotensin system:RAS)阻害薬は,慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)のどのステージにおいても末期腎不全への進展および全死亡を抑制することが知られているため,RAS阻害薬を中心とした降圧治療を行う。降圧目標は130/80mmHg未満とされているが,年齢や降圧に伴う症状などに注意しながら用量を調節する。RAS阻害薬の副作用に高カリウム血症があるため,特に腎機能低下例で新たに開始する場合は注意が必要である。
最近,RAS阻害薬に非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬であるフィネレノンを追加すると,DKDのさらなる進展抑制効果が見込めると報告された2)。ただし,高カリウム血症への懸念から,原則として血清カリウム値が4.8mEq/L以下の患者を対象とする。