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【文献 pick up】DKDの進展過程はDM発症年齢の高低で異なる可能性―JDI誌

宇津貴史 (医学レポーター)

登録日: 2024-08-02

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糖尿病関連腎臓病DKD)とは「典型的な糖尿病性腎症に加え,顕性アルブミン尿を伴わないままeGFRが低下する非典型的な糖尿病関連腎疾患を含む概念」と説明される [CKD診療ガイドライン2023] 。しかしその表現型は糖尿病(DM)「若年発症」例と「中年以降発症」例では異なる可能性が明らかになった。「若年発症」では蛋白尿が先行する一方、「中年以降発症」ではeGFR低下が先に現れるという。福島県立医科大学の齋藤 悠氏らが7月26日、Journal of Diabetes Investigation誌で報告した。

【対象】

解析対象となったのは、成人2型DM 626例である。すでに慢性腎臓病(279例)や他腎疾患(26例)を合併している例などは除外されている。福島県立医科大学附属病院、あるいは豊見城中央病院(沖縄)受診例から該当例を全数抽出した。

【方法】

これら626例を2型DM発症年齢「40歳未満」の「若年発症」群(12.4%)と「40歳以降」の「中年以降発症」群(87.6%)に分け、初回受診時以降のeGFRと蛋白尿の推移を回顧的に比較した。追跡期間中央値は「若年発症」群が5.3年間、「中年以降発症」群は6.0年間だった。

【結果】

・背景因子

年齢中央値は「若年発症」群が36歳、「中年以降発症」群で55歳だった。DM発症から本観察開始までの期間中央値は「若年発症」群で有意に長かった(1.5 vs. 0.7年)。また「若年発症」群ではBMI平均値も有意高値だった(27.9 kg/m2 vs. 25.6 kg/m2)。逆に「高血圧」罹患率は「若年発症」群で有意に低かった(50.0% vs. 62.4 %)。一方、「HbA1c値」に有意な群間差はなかった。

観察開始時のeGFRは「若年発症」群の方が有意に高かった(97.3 mL//1.73m2 vs. 82.3 mL//1.73m2)。

レニン・アンジオテンシン系阻害薬服用率は両群とも低く、群間差はなかった(「若年発症」群:15.4%、「中年以降発症」群:18.8%)。なおSGLT2阻害薬とGLP-1-RAは全く使われていない(対象患者は2019年までの受診例)。

・腎転帰(eGFR低下)

eGFR<60 mL//1.73m2」への低下リスクは、「若年発症」群で有意に低かった(諸因子補正後ハザード比 [HR]0.4995%信頼区間[CI]:0.280.86)。両群のカプランマイヤー曲線は比較開始直後から乖離した。

・腎転帰(蛋白尿)

一方、「+1」以上尿蛋白陽性のリスクは、「若年発症」群で有意に高くなっていた(諸因子補正後HR1.8895%CI1.312.70)。こちらも両群のカプランマイヤー曲線が乖離し始めたのは、比較開始直後からだった。

・腎転帰(DKD)

ただしDKDリスクは、両群間に有意差を認めなかった(発症率は「若年発症」群:53.8%、「中年以降発症」群:48.7%

【考察】

齋藤氏らは、DM発症年齢によりDKD進展の様相が異なる可能性を指摘している。

本研究は日本学術振興会と日本医療研究開発機構からグラントを受けた。

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