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微小変化型ネフローゼ症候群(成人)[私の治療]

No.5234 (2024年08月17日発行) P.43

井上 勉 (埼玉医科大学医学部腎臓内科教授)

岡田浩一 (埼玉医科大学医学部腎臓内科教授)

登録日: 2024-08-18

最終更新日: 2024-08-14

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  • 大量蛋白尿(3.5g/gCr以上)の持続が原因で血中のアルブミンが減少し,それに伴う種々の症状・検査異常を呈する症候群である。代表的な症状は浮腫,脂質異常症(高LDLコレステロール血症)であり,無治療で経過すると胸腹水を伴うanasarcaや,急性腎障害となることも稀ではない。全年齢で発症するが,ネフローゼ症候群に占める本症の割合は低年齢ほど高い。寛解状態を維持できれば腎機能予後は良好であるが,シクロスポリンの長期使用による腎機能の低下や,ステロイド糖尿病・ステロイド骨粗鬆症,易感染性に伴う感染症の合併に注意が必要となる。

    ▶診断のポイント

    急性に発症した浮腫や尿の泡立ちを主訴に医療機関を受診する場合が多い。尿中の蛋白・クレアチニン定量か,蓄尿検査で尿蛋白量を測定し,加えて,血液検査で低アルブミン血症を確認する。大量蛋白尿の原因となる他の疾患(ループス腎炎,糖尿病性腎症,パラプロテイン血症など)を除外する必要がある。一次性ネフローゼ症候群が疑われる場合,成人では積極的な腎生検の適応となる。必ず同時に採取した尿と血液で尿蛋白の選択性(selectivity index:IgGとトランスフェリンのクリアランス比)を確認する。本症は腎組織所見が微小変化群にとどまることが条件である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    最新のガイドライン1),各薬剤の添付文書を確認する。初期から十分量のグルココルチコイドを投与する必要がある。診断が適切であれば年齢を問わず寛解導入に至る。尿蛋白の選択性はステロイド反応性の指標として重要であり,0.1以下は本症を強く示唆する。投与法は経口・静注を問わないが,浮腫が顕著な例では慣例的に点滴静注が選択される場合も多い。初期に大量投与(ステロイドパルス療法)を選択する施設もある。有効性および安全性について経口投与との差異は不明である。

    寛解導入後1~2週間してステロイドの減量を開始する。減量法に明確なルールはないが,2~4週ごとに5~10mg/日減量し,総投与期間が1~2年程度になるよう計画される場合が多い。5~10mg/日程度の量で数カ月~半年程度維持し,同量で再発がないことを確認してから,さらに減量する場合もある。可能であれば市販の尿試験紙を利用して自宅での自己検尿を実施し,連続して陽性となる場合は速やかに医療機関を受診するように勧める。

    再発時の治療法にも様々な考え方があるが,初発時と同量かやや減量したグルココルチコイドで再治療が試みられる。ステロイドの減量によって再発が繰り返される場合(ステロイド依存性)は免疫抑制薬の併用を考慮する。

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