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尿細管間質性腎炎[私の治療]

No.5235 (2024年08月24日発行) P.45

岡田浩一 (埼玉医科大学病院腎臓内科教授)

登録日: 2024-08-22

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  • ここでは主として急性尿細管間質性腎炎(acute tubulointerstitial nephritis:ATIN)を扱う。ATINは腎尿細管間質に炎症細胞浸潤や浮腫が生じ,急性の腎機能障害をきたす疾患である。ATINのうち約70%が薬物アレルギーにより発症し,原因薬物としてはNSAIDs,抗菌薬やプロトンポンプ阻害薬(PPI)が多い。ATINは高齢者を中心に発症頻度が高くなっている。そのほかシェーグレン症候群やIgG4関連腎臓病などの免疫疾患によっても生じる。
    また近年,がん治療の新たな柱として注目されている免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による免疫関連有害事象(irAE)として,ATINを生じることが報告されている。

    ▶診断のポイント

    ほとんどの症例で自覚症状はない。尿量は乏尿性と非乏尿性の場合があり,またNSAIDsによるATINでは全身性浮腫を示すことがある。薬剤アレルギーの場合でも,皮疹,関節痛や発熱などのアレルギー症状を伴う症例は少ない。シェーグレン症候群やIgG4関連腎臓病では唾液腺腫大や乾燥症状,また後者では膵臓腫瘤などの特徴的な病変を合併することがある。

    血液検査所見では,腎機能の低下に伴い,血清クレアチニン値の上昇などが認められる。アレルギー機序が関与している場合は,血中好酸球増多や血清IgE高値を呈することもある。IgG4関連腎臓病では,血中IgG4上昇(135mg/dL以上)や補体低下が特徴である。

    尿検査では,約半数の症例で細菌尿を伴わない白血球尿(無菌性膿尿)を認めるが,尿中好酸球の増加は薬剤アレルギー性ATINの診断における感度・特異度ともに低い。尿細管性蛋白(尿中β2ミクログロブリンや尿中N-アセチルグルコサミニダーゼ)の上昇が認められる一方,血尿は通常軽微である。

    腎尿細管間質の炎症や浮腫を反映して,腹部超音波やCTなどの画像検査において,腎臓の腫大を認めることも多い。また,ガリウムシンチグラフィで腎臓への集積亢進を認める場合もある。

    確定診断は腎生検で,典型例では糸球体はほぼ正常であり,様々な程度に障害された尿細管の周囲間質に著明な細胞浸潤と浮腫を認める。浸潤細胞の主体はTリンパ球であり,有意なプラズマ細胞の混在はシェーグレン症候群,IgG4関連腎臓病(IgG4産生細胞≧40%)を示唆する。間質線維化を合併する場合に,その広がりは腎予後と相関し,治療後も腎機能障害が遷延する可能性が高い。

    薬剤アレルギーが疑われた場合,原因薬剤の同定のためにリンパ球幼若化試験(DLST)が行われることもある。

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