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筋萎縮性側索硬化症(ALS)[私の治療]

No.5235 (2024年08月24日発行) P.46

漆谷 真 (滋賀医科大学内科学講座脳神経内科教授)

玉木良高 (滋賀医科大学内科学講座脳神経内科)

登録日: 2024-08-22

最終更新日: 2024-08-20

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  • 筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)は,大脳と,脳幹や脊髄に起始する運動ニューロン(前者を上位運動ニューロン,後者を下位運動ニューロンと呼ぶ)の消失によって,全身の筋萎縮と筋力低下を主徴とし,発症後2~4年で球麻痺や呼吸筋麻痺を呈する予後不良な疾患である。

    ▶診断のポイント

    脳神経,頸髄,胸髄,腰仙髄の領域における上位運動ニューロンと下位運動ニューロン由来の症状をとらえ,同様の症状を呈しうる疾患を鑑別する。体重減少が目立つことも特徴である。診断確定のためには筋電図や神経伝導検査が必須である。

    主な診断基準には,改訂El Escorial基準,改訂Awaji基準,Gold Coast診断基準の3者がある()。後者ほど診断感度は高い。前2者では上位運動ニューロン徴候を欠くとALSの診断基準を満たさないが,Gold Coast診断基準は,2つの領域で進行性の下位運動ニューロン徴候があれば上位運動ニューロン徴候を欠いても診断が可能となった。前2者と比較して診断感度はより上昇したが,基本的に除外診断であるため診断特異度は低いことに注意が必要である。

    ALSと類似の症状を呈し,しばしば鑑別が問題となる疾患は頸椎症,多巣性運動ニューロパチー(MMN),慢性炎症性多発ニューロパチー(CIDP),封入体筋炎,重症筋無力症(特に抗MuSK抗体陽性),Lambert-Eaton症候群であるが,詳細な神経学的診察と電気生理学的診断によって鑑別は可能である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    残念ながら,現在ALSを治癒あるいは進行を停止させる薬剤はない。しかしながら,わが国ではグルタミン酸放出阻害薬であるリルゾール,抗活性酸素薬であるエダラボンが診断早期の投与によって,各々生存期間の延長と運動機能の低下抑制効果が証明されている。ALSでは体重減少が生命予後に悪影響を及ぼす。必要エネルギーは科学的エビデンスに基づく算出式(清水式)があり,診断時に評価し算出値に基づく栄養指導を行う。さらに進行とともに出現する嚥下障害に対する胃瘻造設,呼吸筋麻痺に対する非侵襲的陽圧呼吸(NIV)の導入も治療の一環として早期から導入する。

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