細菌性角膜炎は,角膜組織に細菌が侵入,増殖することで炎症を起こす疾患である。しかし,その病態や所見は,患者の基礎疾患や免疫能,起炎菌,感染の深さ,使用中の点眼薬など,様々なファクターが関与するため多彩であり,正確な診断ができず,治療に難渋するケースも少なくない。
わが国での発症誘因としては,コンタクトレンズ装用が最多で,レンズケアが不十分な場合のレンズの汚染が原因として挙げられている。そのほかは,外傷,角膜移植や眼表面手術既往,ドライアイなど,眼表面疾患がベースにある場合に起こりやすいことが報告されている1)~3)。
また,細菌性角膜炎の起炎菌では,ブドウ球菌,肺炎球菌,緑膿菌およびモラクセラ桿菌が四大起炎菌として挙げられるが,誘因によって原因菌が異なることも重要なポイントになる。たとえば,コンタクトレンズ装用による角膜炎の主要原因菌は緑膿菌であるし,全身合併症として,糖尿病やアトピー性皮膚炎がある場合には黄色ブドウ球菌が多いことが知られている。また,既に抗菌点眼薬を使用している場合には,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA)やメチシリン耐性表皮ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus epidermidis:MRSE)が検出されるため,点眼歴の聴取も重要である。
細菌性角膜炎の治療は,原因菌を明らかにすることで圧倒的に治療が楽になる。的確な問診と,細隙灯顕微鏡所見,角膜擦過物の検鏡,培養検査から原因菌をできる限り特定し,薬剤感受性の高い点眼薬を選択することが,治療の王道である。
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