慢性糸球体腎炎は,糸球体が炎症性に障害されて蛋白尿や血尿などの尿所見異常を持続的に認め,腎機能障害が慢性的に進行する疾患である。一般的に無症状で,健康診断の際に偶然発見されることが多い。IgA腎症は原発性糸球体腎炎の中で最も頻度が高く,わが国における発見動機の約70%は健康診断時の検尿異常である。
糸球体疾患は腎臓そのものに病態の首座がある原発性と,感染症や免疫疾患,膠原病などの全身性疾患に伴い発症する続発性に分類できる。確定診断は,腎生検によって病理組織学的に行われる。
一般的に慢性糸球体腎炎は,ステロイドや免疫抑制薬により炎症の抑制を図ることが多いが,治療適応およびその治療方法は疾患や病型によって異なる。本稿では最も頻度の高い,成人のIgA腎症に関して述べる。
IgA腎症の治療は,尿蛋白量と腎機能を中心に,組織学的重症度(H-Grade or MEST-C)や年齢,血圧,血尿の程度などの情報を加味し総合的に決定する。「IgA腎症診療指針 第3版」では透析導入リスクにより低・中等・高リスク群に層別化され,尿蛋白量,高血圧の有無などに応じて抗血小板薬,レニン-アンジオテンシン(renin-angiotensin:RA)系阻害薬を用いることが推奨されている。
中等・高リスク群では,糸球体に急性病変を認める場合や,eGFRが60mL/分/1.73m2以上かつ尿蛋白が0.5g/日以上では,積極的にステロイドパルス療法を行う。低リスク群でも糸球体に急性活動性病変を認めた際はステロイドパルス療法を考慮する。超高リスク群は高リスク群に準じて加療するが,慢性の糸球体病変が多い症例におけるステロイド療法は慎重に行う。また,扁桃摘出術+ステロイドパルス併用療法(扁摘パルス療法)はわが国の腎専門施設の60%以上で行われ,近年の多施設前向きおよび後ろ向き研究で高い有用性が示されており,積極的に検討される1)2)。
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