【質問者】品川尚文 KKR札幌医療センター呼吸器内科/呼吸器センター長
【原因微生物不明の重症肺炎や免疫不全宿主の肺炎などがよい適応である】
感染症診療において原因微生物の同定は基本になりますが,肺炎診療においては従来の培養法を用いた検討では約40%程度が原因不明とされていました。2015年にNEJMに報告された市中肺炎(community-acquired pneumonia:CAP)の疫学研究において,約27%にウイルスが検出されることが明らかになり1),以後ヨーロッパでのメタアナリシスでは約22%2),わが国で筆者らが実施した多施設共同前向き研究では約23.4%で検出され3),ウイルス性肺炎の疾病負荷が徐々に明らかにされてきました。
「成人肺炎診療ガイドライン2024」の改訂においてはCAPの検出微生物に関してシステマティックレビューが行われました。PCRを用いた検討ではヒトエンテロウイルス(human enterovirus:HEV)/ヒトライノウイルス(human rhinovirus:HRV):9.4%(95%CI:0〜20.5),ヒトメタニューモウイルス(human metapneumovirus:hMPV):4.6%(95%CI:1.6〜7.6),RSウイルス(respiratory syncytial virus:RSV):4.2%(95%CI:1.2〜7.1)と複数のウイルスを認めており4),PCR等の遺伝子診断の普及によって,将来的にCAPの疫学が大きく変わると思います。
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