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糖尿病の薬物療法(経口薬)[私の治療]

No.5245 (2024年11月02日発行) P.48

川口智也 (東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科)

桜井賛孝 (東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科)

山内敏正 (東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科教授)

登録日: 2024-11-03

最終更新日: 2024-10-29

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  • 糖尿病は,インスリン作用不足による慢性の高血糖状態を主徴とする代謝症候群である。代謝異常が持続することで,特有の合併症が出現する。網膜症・腎症・神経障害の三大合併症に代表される細小血管障害に加え,糖尿病は動脈硬化を促進し,心筋梗塞,脳卒中,下肢の末梢動脈疾患といった大血管障害の危険因子となる。これら合併症の発症・進展抑制目的のため,血糖マネジメントが重要である。
    本稿では経口血糖降下薬について,その原則的な適応である2型糖尿病を念頭に述べる。
    インスリン抵抗性とインスリン分泌不全の寄与度は症例によって異なる。

    ▶診断のポイント

    糖尿病の診断基準が満たされることを確認する。具体的には,①空腹時血糖値≧126mg/dL,②OGTT2時間値≧200mg/dL,③随時血糖値≧200mg/dL,④HbA1c≧6.5%として,「①②③のうち1項目と④を,同時または異時性に満たす」「①②③のうち1項目を異時性に2回満たす」ことを確認する。④を2回満たすだけでは診断できないことに留意する。その他,「①②③のうち1項目」に加えて,「糖尿病の典型的症状」もしくは「確実な糖尿病網膜症」のいずれかが認められれば診断となる。

    また家族歴や肥満歴の有無,GAD抗体や併存疾患などの情報から,病型を同定する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    まずインスリンの絶対的および相対的適応有無を判断する。続いて血糖マネジメント目標として,日本糖尿病学会の「熊本宣言2013」や「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」をもとに設定する。

    「2型糖尿病の病態への適性」「安全性への配慮」をふまえ,考慮すべき併存疾患があれば付加価値を期待した選択を行う。

    具体的には代謝異常の程度,インスリン分泌能や抵抗性の程度に加え,年齢や肥満の程度,慢性合併症や併存症,肝腎機能,ADL,サルコペニア・フレイルの有無,認知機能等を評価し,これらを考慮して糖尿病治療薬を選択する。

    各論として,メトホルミンは,腎機能障害,全身状態不良,ヨード造影剤使用時には禁忌となりうるため留意する。

    SGLT2阻害薬は,高齢者や老年症候群を有する場合は慎重に投与するほか,脱水予防,全身状態不良時の休薬に留意する。

    ピオグリタゾンは,高齢女性において骨折リスク上昇が報告されており,処方を避ける。

    WEBコンテンツ「糖尿病治療薬マニア〜ガイドライン・教科書ではわかりにくい〈現場的使用法〉」

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