特発性非特異性間質性肺炎(idiopathic nonspecific interstitial pneumonia:iNSIP)は,特発性間質性肺炎(idiopathic interstitial pneumonias:IIPs)の疾患単位のひとつで,2013年の国際分類1)では特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis:IPF)とともに慢性線維化性間質性肺炎に分類されている。iNSIPの経過は,治療が奏効し可逆性を示す症例から,治療抵抗性で線維化が進行する予後不良の症例まで多彩である。病理所見から細胞性(cellular)と線維性(fibrotic)にわけられるが,線維性が多く,2018年の分類では非特異性間質性肺炎(nonspecific interstitial pneumonia:NSIP)は慢性線維化性間質性肺炎に分類される2)。
一方,特発性器質化肺炎(cryptogenic organizing pneumonia:COP)もIIPsの疾患単位のひとつで,急性・亜急性間質性肺炎に分類されている1)。COPは臨床的には市中肺炎様の症状と画像所見を呈し,抗菌薬に反応せず,典型例では再発性,遊走性の陰影を認め,ステロイドへの反応性が良好な間質性肺炎と位置づけられている。気管支肺胞洗浄液においてリンパ球比率の上昇を認める。
詳細な問診,身体診察,血液・高分解能CT(HRCT)検査所見の評価を行い,膠原病に伴う間質性肺炎や過敏性肺炎,薬剤性肺炎など二次性の間質性肺炎を除外することが非常に重要である。iNSIPと診断された症例の3~17%が,経過中に膠原病を発症するとの報告もある3)。COPの主な鑑別疾患にはcellular NSIPや細菌感染,膠原病,好酸球性肺炎,薬剤性肺炎,放射線肺炎などが挙げられる。いずれも診断の際には多分野による集学的検討(multidisciplinary discussion:MDD)が求められ,現在の国際ガイドライン2)では,iNSIPおよびCOPの診断には外科的肺生検が必要であるが,実臨床では施行せず診断されることもある。
iNSIPおよびCOPの治療方針は,「特発性間質性肺炎 診断と治療の手引き2022(改訂第4版)」3)を活用し,治療反応性と副作用のリスクを勘案し,総合的に決定する。また,薬物療法(ステロイドや免疫抑制薬)導入後も適宜臨床経過や治療反応性を再評価し,治療方針を検討する。
進行性線維化を伴うiNSIPでは,抗線維化薬ニンテダニブの導入を検討し,急性増悪時にはステロイドパルス療法等を行う。免疫抑制薬は保険適用外であること,またニンテダニブは進行性線維化を伴う症例のみ保険適用となることに注意が必要である。
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