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脊椎・脊髄損傷[私の治療]

No.5253 (2024年12月28日発行) P.40

南 和伸 (兵庫県立西宮病院救命救急センター医長)

中川雄公 (兵庫県立西宮病院救命救急センター長)

登録日: 2024-12-25

最終更新日: 2024-12-24

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  • 脊椎・脊髄損傷においては,全身状態の評価,神経学的診察と並行して速やかに画像評価を行い,早期に治療方針を立てる必要がある。脊椎損傷を伴っていても,安定型で神経症状がないか軽微であれば保存療法が選択されるが,不安定型の骨折がある場合や明らかな神経の圧迫を認める場合には,手術療法が選択される。

    ▶病歴聴取のポイント

    受傷時の状況を詳細に聴取し,受傷機転や損傷部位・損傷型を推察するよう努める。具体的には,交通事故であれば車体の速度,衝突の方向,シートベルト装着の有無などである。

    ▶バイタルサイン・身体診察のポイント

    意識状態とバイタルサインを評価し,モニタリングを行う。

    腹式呼吸を呈していないか,呼吸様式を確認する。

    低血圧と徐脈を認めた場合,神経原性ショックを疑う。神経原性ショックとは脊髄損傷後の交感神経不全に伴う循環不全であり,第4胸髄節(T4)より高位の脊髄損傷において生じやすい。

    脊髄損傷では,運動,感覚,反射の神経学的評価を行い,損傷高位を推定する。ASIA(American Spinal Injury Association)のkey musclesやkey sensory pointを参考にすると,効率的に神経学的評価を行うことができる。

    完全・不完全麻痺の判断,脊髄ショック離脱の有無の判断には仙髄領域の評価が重要である。なお,脊髄ショックとは脊髄損傷後の一過性の脊髄反射消失のことであり,神経原性ショックの定義とは区別されるため注意が必要である。最下位仙髄節(S4〜S5)の支配域である肛門周囲の感覚脱失や,肛門括約筋の収縮がみられない場合は完全麻痺と診断し,損傷髄節以下の髄節支配領域に感覚,運動あるいは腱反射の機能が部分的に残っているものは不完全麻痺と診断する。

    重症度の評価にはASIA機能障害尺度やFrankel分類が広く用いられている。

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