夜尿症(nocturnal enuresis:NE)の診断は,5歳以上の小児が,1カ月に1回以上の夜尿を3カ月以上認める場合になされる。週に4日以上認める場合に「頻回」,3日以下では「非頻回」とされ,また昼間の下部尿路症状(lower urinary tract symptoms:LUTS)の合併の有無でそれぞれ非単一症候性NE,単一症候性NEと定義される。国際小児禁制学会(ICCS)は非単一症候性NEに対して,まずは昼間のLUTSに対する治療を第一に行うことを推奨している。
LUTSには神経発達症群(単一症候性NEと非単一症候性NEのそれぞれ17.6〜20.7%,23.1%にADHDが併存するという報告がある)と慢性機能性便秘を併存することが多いが,そのほかに排尿筋過活動(detrusor overactivity:DO),過活動膀胱(overactive bladder:OAB),反復性尿路感染症,脊髄癒合不全(spinal dysraphism)などが含まれる。
まずは問診を詳細に行い,LUTSの有無を検討する。その際に,家族歴で両親のNEの有無や治癒した年齢を確認することも今後の予測に大切である。排尿にかかる時間や,排尿間隔が極端に短い場合には,定時排尿や二段排尿によるウロセラピーを検討する。我慢訓練は,成人のNEでは推奨度が高いが,小児での効果は限定的である。
NEの治療は長期にわたる場合が多いので,継続的な受診でモチベーションを維持し,相談を続けていくことが重要である。初診時の患児自身のNEに対する問題意識は大抵の場合は稀薄で,これはNEのない生活を送ったことがなければ当然であり,保護者が悩んでいる場合が大抵である。よって,受診の継続には保護者の満足度が高いことは非常に重要である。
そのため,可能な限り早期(夜尿記録がしっかりあれば初診時)から薬物療法〔ミニリンメルトⓇ120μg(デスモプレシン酢酸塩水和物)〕を開始し,2週間以上が経過した後に240μgに増量すると,NEを認めなくなったり,そこまで至らずとも夜尿の量自体が減ることが多い。その確認のためにも,初期には特に夜尿記録(頻度やおむつの重量を記録)が信頼関係の確立とその後の診療に役立つ。
アラーム療法は,患児・家族と相談し,希望があれば導入する。タイミングは患児・家族の希望があったときと考えている。
LUTSについての検査は,十分に行ってから治療を開始しようとすると検査過剰になってしまうことが多いので,治療を進めながら強く疑った際に順次検索を行うようにしている。
便秘に関して,数日に1回は排便があり,特に腹痛がない場合でも,連日の排便を認めるように管理することで,NEが改善する症例をしばしば経験する。
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