大規模疫学調査による下部尿路症状(lower urinary tract symptoms:LUTS)の最近の動向をご教示下さい。山梨大学・三井貴彦先生にご解説をお願いします。
【質問者】
小島祥敬 福島県立医科大学泌尿器科教授
【わが国では,20歳以上の約8割が何らかの下部尿路症状を有している】
LUTSは,蓄尿症状,排尿症状,排尿後症状の3 種類に大別され,LUTSの有症率は一般的に加齢とともに増加します。LUTSは生活の質(QOL)に影響を与えることもあり,超高齢社会を迎えているわが国では,LUTSの状態を評価し適切な治療を行うことが重要です。
わが国のLUTSにおける疫学については,2002年に行われた調査により有症率やQOLへの影響が明らかとなりました。しかし,この疫学調査から20年以上経過した現在,わが国は先進国と比べても未曾有の超高齢社会を迎えていることもあり,日本排尿機能学会では神経因性膀胱研究会発足から50年を迎えた2023年に,インターネットリサーチでLUTSに関する疫学調査を約20年ぶりに行いました1)。
今回の疫学調査では,20~99歳の各年代において,総務省統計局国勢調査の人口比率に基づき,男女,年代別,地域別等で割付を行った男性3122人,女性3088人の6210人が質問に回答しています。結果として,LUTSのうち少なくとも1つの症状を有する20歳以上の割合は77.9%でした。そのうち,蓄尿症状が最も多く,続いて排尿症状,排尿後症状でした。2002年に準じて40歳以上に限定すると,LUTSのうち少なくとも1つの症状を有する割合は82.5%でした。このように,8割前後が何らかのLUTSを有していることになります。これらのLUTSの有症率は加齢とともに上昇していることから,超高齢社会におけるLUTSに対する診療は,ますます重要になっていると考えられます。
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