(概要) 厚労省の有識者検討会は胃がんの対策型検診として、X線検査に加え、内視鏡検査も推奨することを盛り込んだ報告書を取りまとめた。
厚生労働省の「がん検診のあり方に関する検討会」(座長=大内憲明東北大教授)は7月30日、胃がんの対策型検診(市町村が実施する住民検診)として、従来の胃X線検査に加え、胃内視鏡検査を新たに推奨するとした報告書を大筋で了承した。厚労省は来年度からの適用を目指す。
胃がん検診はX線検査か内視鏡検査のいずれかで行い、内視鏡検査は偶発症に対応できる体制を整えた上で実施されるべきとされた。内視鏡検査導入の根拠の1つが、鳥取県と新潟県で実施された症例対照研究。3年以内に少なくとも1度の内視鏡検査の受診歴がある場合は約30%の死亡率減少効果が認められた。
40代の胃がん罹患率は、2011年には1990年の約半分と近年大きく減少していることから、検診の対象年齢はX線検査、内視鏡検査ともに現行の40歳以上から50歳以上に引上げ。内視鏡検査の間隔は2年ごととした。X線検査については、1~3年以内に受診歴がある場合約60%の死亡率減少効果が認められている。
一方、胃がんに対するペプシノゲン検査とヘリコバクター・ピロリ抗体検査の併用法は、死亡率減少効果のエビデンスが十分でないとして、引き続き検証を行っていく必要があるとされた。
国立がん研究センターは今年4月、学術的な観点からの政策提言として、対策型の胃がん検診にX線検査と内視鏡検査を推奨するガイドラインを公表している。ガイドラインでは、X線、内視鏡ともに対象年齢は50歳以上が望ましいとし、内視鏡検査の間隔は2~3年としている。
●乳がんはマンモ単独も
報告書では併せて、これまでマンモグラフィと視触診の併用を推奨していた乳がん検診について、視触診を「任意」とし、マンモグラフィ単独でもよいと提言した。
これは、視触診が必ずしも早期発見に最適ではないことや、手技に習熟した医師の確保が困難で精度に問題があること、以前に比べマンモグラフィの整備が進んだことを踏まえたもの。対象年齢や検診間隔は、従来の「40歳以上」「2年に1度」から変わらない。
乳がんの超音波検査は、死亡率減少効果などを引き続き検証する必要があるとされた。日本人に多い高濃度乳腺での感度・がん発見率では超音波検査の有用性が示されている。現在、超音波検査の死亡率減少効果を検証するランダム化比較試験が行われており、将来的には対策型検診に導入される可能性があると位置づけられた。