▼厚生労働省が先月作成した「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」(GL)。GLの対象疾病は限定されていないが、特にがんに関する情報を充実させている。
▼国立がん研究センターの推計によれば、年間で見ると、新たにがんと診断される患者の3割が就労世代(20~64歳)だ。そして、医療の進歩により生存率は向上。5年生存率でみると、1993~96年は53.2%だったのが、2003~05年には58.6%となった。
▼入院日数も短縮している。がん患者の平均在院日数は2002年が35.7日だったのが、14年には18.7日に減る一方、通院しながら治療を受ける患者が増えている。GLでは「がんは“不治の病”から“長く付き合う病気”へと変化している」と指摘する。
▼治療期間が長くなれば、治療費の経済的負担も大きくなる。例えば、昨年承認された肺がんの新薬の値段は月260万円。高額療養費制度で補助されるとはいえ、毎月の負担となると家計に重くのしかかる。就労世代は子育て世代も多く、扶養家族がいる場合には仕事との両立は一際切実な問題となる。
▼10年国民生活基礎調査によれば、がんの治療のために仕事を持ちながら通院している人は約32.5万人。診断技術や治療法の進歩に加えて、今後は労働力の高齢化が見込まれており、治療と仕事を両立する患者はさらに増加していくだろう。
▼がんの進行度、治療の副作用やメンタルヘルスなど、就業上、配慮が必要な症状は患者によって異なる。GLでは、企業と医師が連携し、個別性に配慮した支援を求めている。がん治療は、患者の職業上への配慮が一層求められる時代となっていく。患者が職場の理解不足により離職に追い込まれることのないよう、治療と仕事の両立を支えたい。