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多発性嚢胞腎に対するトルバプタンの使用法

No.4745 (2015年04月04日発行) P.59

堀江重郎 (順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科学教授)

登録日: 2015-04-04

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

多発性嚢胞腎に対する世界初の治療薬としてバソプレシンV2受容体拮抗薬であるトルバプタンが使用可能となりました。トルバプタンの適応症例,治療効果の評価法,副作用,処方時の注意点など使用法の実際について,順天堂大学・堀江重郎先生のご教示をお願いします。
【質問者】
長船健二:京都大学iPS細胞研究所 増殖分化機構研究部門教授

【A】

常染色体優性多発性嚢胞腎(autosomal dom-inant polycystic kidney disease:ADPKD)は,腎臓,肝臓の嚢胞が増大し,70歳までに半数が終末期腎不全へ進行する疾患です。2015年1月から指定難病として,重症例では医療費助成が受けられます。
バソプレシンV2受容体拮抗薬のトルバプタン(サムスカR)に,ADPKDの腎容積増大と腎機能低下を抑制する効果があることが示され,世界に先駆けて日本で治療薬として承認されました。適応となるのは,両腎容積が750mL以上であり,年間の腎容積増大率がおおむね5%以上と,腎容積が増大していることが確認される重症例です。
ただし,投与開始時のeCCrが60mL/分未満の患者さんや小児に対する有効性,安全性は確立していません。また,eGFRが15mL/分/1.73m2未満の患者さんには禁忌です。治療は登録された処方医が,事前に登録した症例に対し入院下で開始します。
トルバプタンを内服すると,著しい水利尿が起こります。尿浸透圧を低く保つことが治療効果につながります。このため,患者さんは5~6Lと,かなり多くの飲水をする必要があります。十分に水分が摂取できない場合は,高ナトリウム血症を生じるため,適切な水分摂取が治療継続の鍵となります。具体的には,飲水量を記録するほか,毎日の体重を記録し,飲水量が十分であるかどうかの指標とします。
注意すべき有害事象として,肝機能障害があります。減量や投薬を中止することで改善します。治療効果の評価法としては,腎機能の推移を観察していくこと,CTもしくはMRIにより腎容積の変化をみることが主体となります。
かなり多量の水分摂取を継続的に行わなければならないこと,また尿量の増加に伴い排尿の回数が増えることから,内服後に患者さんのライフスタイルは大きく変わります。治療に際しては,十分な説明と,医療者によるサポートが重要です。

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