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冠動脈CTの適応

No.4745 (2015年04月04日発行) P.60

木村文子 (埼玉医科大学国際医療センター画像診断科教授)

登録日: 2015-04-04

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

冠動脈CTが普及して,一般病院でも行えるようになってきました。心臓カテーテル検査に比べ,はるかに低侵襲に冠動脈狭窄病変の評価が行えるメリットは計り知れません。一方で冠動脈CTが容易にできる状況では,胸痛患者すべてにまず冠動脈CTを行う,健診に用いるなど,適応が拡大する傾向があることは否めません。冠動脈CTはどのような場合に用いるのが適切なのか,検査の適応について,埼玉医科大学国際医療センター・木村文子先生のお考えをお聞かせ下さい。
【質問者】
星 俊子:埼玉慈恵病院放射線科

【A】

冠動脈CTは,診断精度が高く,特に陰性適中率がきわめて高い検査です。すなわち,CTで冠動脈に狭窄がなければ,冠動脈狭窄は否定できると考えられています。また,CTは,冠動脈の内腔のみでなく,狭窄の原因であるプラークを描出することができます。
日本循環器学会のガイドライン(「冠動脈病変の非侵襲的診断法に関するガイドライン」)によると,冠動脈CTは,胸痛があり,安定狭心症が疑われる冠動脈疾患の中程度のリスク群で,運動負荷が困難な場合もしくは運動負荷心電図が判定困難な場合に,推奨される検査とされています。
また,急性胸痛患者に対する冠動脈CTの有用性についても報告されています。冠動脈CTは,急性胸痛で来院し,心筋逸脱酵素の上昇がなく,心電図所見が陰性もしくは診断不能な,低~中等度リスクの患者の早期診断もしくは除外診断に有用で,これらの患者もCTの良い適応です。一方,心電図変化があり,心筋逸脱酵素の上昇があるような高リスク群では,冠動脈CTの適応は原則的にはありません。
そのほか,心不全患者における冠動脈病変の診断および除外,冠動脈バイパスグラフトや冠動脈奇形の評価は,冠動脈CTの良い適応と考えられます。
一方,従来の危険因子や冠動脈石灰化スコアに比べて,無症状患者に対する冠動脈CTの有効性は証明されておらず,無症状患者にはCTは適応がないと考えられています。

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