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生活習慣病と前立腺肥大症・過活動膀胱【メタボリック症候群と排尿障害・蓄尿障害には共通のリスクがある】

No.4787 (2016年01月23日発行) P.60

横山 修 (福井大学医学部泌尿器科教授)

登録日: 2016-01-23

最終更新日: 2016-10-25

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【Q】

近年,超高齢社会の進展とともに,排尿障害や蓄尿障害をきたす前立腺肥大症や過活動膀胱を有する患者が増加しています。最近,これらの疾患には生活習慣病が深く関わっていると指摘されています。生活習慣病がこれらの疾患を誘発する機序,および予防・治療法について福井大学・横山 修先生のご教示をお願いします。
【質問者】
小島祥敬:福島県立医科大学泌尿器科教授

【A】

1)生活習慣病を背景として排尿障害・ 蓄尿障害が発生する
メタボリック症候群は心血管病のハイリスク状態ですが,最近の臨床研究により前立腺肥大症や夜間頻尿を代表とする下部尿路症状(lower urinary tract symptoms:LUTS)の重要なリスクファクターでもあることが示されました。さらに高血圧,糖尿病,脂質異常症などメタボリック症候群の危険因子の数が多いほどLUTSスコアも高いと報告され,それら危険因子とLUTSとの相関が注目されています。
したがって,メタボリック症候群と排尿障害・蓄尿障害の間には多くの共通するリスクが存在し,生活習慣病の1つの症候として排尿障害が存在する可能性が示唆されます。
(2)合併のメカニズムと予防・治療
男性において生活習慣病になぜLUTSが合併するのか,そのメカニズムは複雑であり,数々の臨床・基礎研究が報告されています。メタボリック症候群に伴う耐糖能異常は高インスリン血症をまねき,このような状況下ではインスリンが前立腺の増殖因子として作用し,前立腺の腫大をもたらすとされています。また,男女共通の因子として,メタボリック症候群や高血圧に伴う膀胱局所の血流障害と酸化ストレスが知覚神経に作用して蓄尿症状を引き起こし,血流障害が高度になると膀胱の収縮障害が生じて排尿障害が出現すると考えられています。
治療については,男性の前立腺肥大症に対しては各種α1ブロッカー,ホスホジエステラーゼ5阻害薬(タダラフィル),5α還元酵素阻害薬(デュタステリド),女性の過活動膀胱に対しては抗コリン薬やβ3作動薬が有効ですが,生活習慣病に対する治療薬,すなわちアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬,脂質異常症治療薬などもLUTSを改善させたという報告が散見されています。また,体重減少が尿失禁の改善に有効であるという臨床報告もあり,薬物治療とともに行動療法の重要性が指摘されています。

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