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アレルギー性結膜疾患の新しい薬効評価法と根治治療開発の現状【抗原曝露試験を用いた新しい薬効評価が行われており,負担が少なく,副作用のない,米を食べる経口免疫療法が開発中】

No.4803 (2016年05月14日発行) P.56

福島敦樹 (高知大学医学部眼科学講座教授)

福田 憲 (高知大学医学部眼科学講座准教授)

登録日: 2016-05-14

最終更新日: 2016-10-25

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【Q】

アレルギー性結膜炎や春季カタルなどアレルギー性結膜疾患は非常に患者数が多く,労働や勉学の効率を大きく低下させています。従来,わが国では環境試験で点眼薬の効果を評価しており,その解釈に苦労していました。さらに根治治療へ向けた新たな試みが始まっていると聞きます。最近の新しい評価法の導入と根治治療開発の現状について,高知大学・福島敦樹先生と福田 憲先生のご教示をお願いします。
【質問者】
北市伸義:北海道医療大学個体差医療科学センター 眼科学系教授

【A】

アレルギー性結膜疾患の治療の基本は抗アレルギー点眼薬です。抗アレルギー点眼薬の薬効評価試験系として,これまでは環境試験(日常の花粉飛散下でアレルギー性結膜炎を発症している患者を対象とした試験)が用いられてきました。環境試験では対象となる患者間で,曝露される抗原量や時間帯が異なります。また,環境試験では検者は被検者を厳重に監督することができないため,点眼薬の使用方法が厳密に守られているかは定かではありません。これらの弱点をカバーする手段として,抗原曝露試験を用いた薬効評価が注目されるようになりました。点眼薬に特化した抗原曝露試験は結膜抗原誘発試験(抗原稀釈液を被検者に点眼してアレルギー反応を誘発させる試験)です。花粉非飛散期に抗原稀釈液を点眼して瘙痒感と結膜充血を評価します。再現性の高い方法で,被検者間に認められる結果のばらつきも少なく,最近の抗アレルギー点眼薬はこの方法を用いて承認されています。
現在のアレルギー性結膜炎の治療は,眼鏡などによる抗原回避と,抗アレルギー点眼薬による薬物療法です。これらの治療は対症療法であり一時的な症状の軽減はできますが,根治はできません。アレルギー性疾患に対する根治療法としては,アレルゲン免疫療法があります。わが国でもスギ花粉症に対する舌下免疫療法に用いるスギ花粉舌下液が2014年より薬価基準に収載され,耳鼻科を中心として行われはじめています。しかし,眼症状のみのスギ花粉症患者に対してこの舌下免疫療法を行っている眼科医はほとんどいないのが現状です。また,現在の舌下免疫療法も効果が出るまでに毎日施行しても数年を要し,必ずしも全員に効果が出るわけではないようです。
理想的には,より簡便に施行でき,短期間で効果が出て,また副作用が生じにくい免疫療法が望まれます。私たちは農業生物資源研究所の高岩文雄博士らのグループが開発した,アレルゲン性を失わせたスギ花粉の抗原を発現させた遺伝子組換え米を用いて,この米を食べる経口免疫療法がマウススギ花粉症モデルで結膜炎の予防および治療に効果があることを明らかにしました。日本人の主食である「お米」を食べることによる,患者の負担が少なく,また副作用のない,新しい花粉症の根治療法として近い将来に臨床応用できることをめざして研究しています。

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