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PSA数値と骨硬化像の関係

No.4719 (2014年10月04日発行) P.66

大家基嗣 (慶應義塾大学泌尿器科教授)

登録日: 2014-10-04

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

61歳,男性。2012年より血液透析をしている。2013年6月頃から血尿と臀部痛があり,同年9月のPSAが159ng/mLと上昇。諸検査の結果,前立腺癌の骨転移と判明。
2013年10月よりリュープリンを1カ月に1回注射して,4カ月後にPSAは0.31ng/mLまで下降した。血尿は消失しているが,臀部痛などの軽減は思わしくない。また,X線像では前立腺癌と診断された当初と現在を比較すると,両仙腸関節の硬化像の程度と範囲が拡大している。PSAの数値と骨硬化像とは相関しないものか。 (秋田県 F)

【A】

前立腺癌の診断と治療は,PSA値が測定されるようになってから大きな変革を遂げた。PSA値が高い(4ng/mL以上)ことで前立腺癌が疑われ,精査の対象となった。特に前立腺癌は,早期のみならず,進行癌でも症状が出にくいがんであったが,このようなPSA値を用いたスクリーニングによって,早期の発見が可能になったのである。
前立腺癌は進行すると骨に転移することが特徴である。PSA値が高いほど,前立腺癌は進行していることが多い。本例の159ng/mLという値は非常に高い値であるため,転移の存在を疑う。骨に転移があるかどうかは骨シンチグラフィーで評価する。肺癌や胃癌も骨に転移するが,これらの場合は骨が溶けたような画像になることが多く,これを溶骨性の転移と呼ぶ。これに対して,乳癌と前立腺癌が骨に転移した場合の骨が濃くなったような(ご指摘の骨硬化像)所見を造骨性の転移と呼ぶ。
鑑別の際,明確にさせておかなければならない事項がある。それは,骨硬化像のある仙腸関節の状態である。なぜならば,造骨性の転移は骨硬化像を呈し,一方でリュープリンによる治療が効果的であり,がんが死滅し,治癒していく過程で骨が再生しても骨硬化像を示す。つまり,造骨性の転移をきたすがんにおける骨硬化像では,がんが治癒してきているのか進行しているかの区別ができないのである。よって,本質問に対する回答は,PSAの数値と骨硬化像とは必ずしも相関しない,となる。
本例はPSA値が下がっているため,ご指摘の仙腸関節にもともと転移が存在したとすれば,おそらく治癒の過程で骨硬化像を示している可能性が高いと思われるが,断定はできない。鑑別のためにはMRIでの撮影を勧める。MRI検査をすることで,仙腸関節でがんがどうなっているのか,画像として明確にわかる。

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