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喫煙者と非喫煙者の平均寿命の差

No.4732 (2015年01月03日発行) P.103

倉原 優 (近畿中央胸部疾患センター内科)

登録日: 2015-01-03

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

喫煙者と非喫煙者の平均寿命を比較した場合,これらの差はどの程度あると言えるか。合併症のない喫煙者が禁煙した場合の平均寿命の変化など。 (和歌山県 W)

【A】

喫煙者の中には途中で禁煙する人が多くいるため,喫煙強度によって平均寿命が異なることは明白であるが,一般的に喫煙者と非喫煙者の平均寿命の差は約10年と言われている。
1950年に始まった日本の寿命調査に参加した6万人以上の男女の前向きコホート研究によれば,喫煙者の平均寿命は非喫煙者に比べて男性で8年,女性で10年短かったとされている(文献1)。米国でも似たような結果が得られており,喫煙者は10年以上寿命が短くなるようである(文献2)。また,生存率という観点からみた場合,25~79歳まで生存する確率は,非喫煙者では喫煙者の約2倍高いとされている。喫煙による超過死亡の多くは,悪性腫瘍,心血管疾患,呼吸器疾患などによるものと考えられ,これらの疫学研究で補正されうる因子は肥満指数(body mass index)やアルコール摂取量などである。そのため,基本的には合併症のない成人の喫煙者の結果と解釈して問題ないだろう。
たばこを1本吸うと寿命が○分短くなるという報告がいくつかあるが,たとえば11分寿命が短くなるという有名な報告がある(文献3)。単純計算すると1日20本たばこを吸うと,1日で4時間弱,1カ月で4~5日,1年で1カ月以上寿命を短くすることになる。こんなに単純に計算されるものではないだろうが,喫煙者には今すぐ禁煙をして頂きたい。
その禁煙の効果については,35歳より前に禁煙することで,様々なリスクを回避でき,禁煙後10~15年で死亡リスクが非喫煙者とほぼ同じレベルに戻るとされている。禁煙する年齢にもよるが,禁煙によって平均寿命は男性で約1.8年,女性で約0.6年延びるとされている(文献4)。
2014年7月,日本たばこ産業(JT)は,当年の国内の喫煙者率が19.7%であったと発表した。消費増税による値上げの影響が大きかったとは言え,健康に対する意識も高まってきたのかもしれない。喫煙者率が20%を下回ったのは,喫煙者率の調査が始まった約半世紀前から初めてのことである。

【文献】


1) Sakata R, et al:BMJ. 2012;345:e7093.
2) Jha P, et al:N Engl J Med. 2013;368(4):341-50.
3) Shaw M, et al:BMJ. 2000;320(7226):53.
4) 渋谷健司, 他:我が国の保健医療制度に関する包括的実証研究. 厚生労働省政策科学総合研究事業(政策科学推進研究事業), 2011.

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