【Q】
ステロイドは様々な作用,副作用を有しているが,ステロイドレスポンダーと言われる人はノンレスポンダーと何が異なるのか。作用の現れ方も異なるのか。 (千葉県 K)
【A】
ステロイドレスポンダーはステロイドの局所または全身投与で高眼圧をきたす人である。内因性ステロイドが原因となる症例では血中コルチゾールレベルと眼圧日内変動との関連が報告されており,副腎皮質ホルモンが上昇する疾患で高眼圧が認められている。外因性ステロイドでは点眼,全身投与,さらには皮膚科軟膏やほかの局所投与で眼圧が上がる人がいる。
発現頻度は正常者に比較して,原発開放隅角緑内障患者およびその血縁者,若年者,高度近視患者,糖尿病患者に多いとの報告がある(文献1)。若年者に多いことから,特に小児にステロイドを投与する必要がある場合は注意が必要である。
ステロイド緑内障で視野障害が末期になって眼科を受診する悲惨な子どもの患者を時に見る。ステロイド投与後1週から数週間で眼圧が上がることが多いが,中には数カ月後に眼圧が上昇することもある。
眼の中には,房水が毛様体で産生され,隅角というところから眼外に出ていく水の循環がある。房水が眼外に流れにくくなると眼内に溜まり,眼圧が上がる(図1)。
眼圧が上がると視神経の眼球からの出口(視神経乳頭)を傷め緑内障が発症する。徐々に視野が狭くなっていき,無治療であればいずれ失明することもある病気が緑内障である。
房水の流出を制御しているのは線維柱帯細胞である。ステロイドレスポンダーの人は隅角に存在する線維柱帯細胞の機能不全が起こり,線維柱帯に細胞外マトリックスが沈着することで房水流出障害が起こり眼圧上昇をきたすと考えられている(文献2)。ステロイドを中止すれば多くの人は眼圧は正常化するが,中には眼圧が下がらない人がいる。眼圧が下がらない場合は眼圧下降薬や緑内障手術が必要になる。
一方,ノンレスポンダーの人にステロイドを投与しても眼圧は上昇しない。ステロイド本来の効果発現には両者に差はない。
1) Razeghinejad MR, et al:Ophthalmic Res. 2012;47(2):66-80.
2) Kubota T, et al:J Glaucoma. 2006;15(2):117-9.