【Q】
『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2011年版』には,骨粗鬆症治療中患者の本来の骨代謝状態を知るためには,前治療薬を1~6カ月以上休薬すると記載されていますが,患者に治療継続の意思があり,休薬が難しい場合があります。治療薬の効果を知るために休薬する必要はあるのでしょうか。たとえば,薬剤内服下での治療効果を判定するという方法はありますか。また,ビスホスホネート長期内服下で骨吸収マーカー高値の場合の治療の選択肢についてもご教示下さい。 (神奈川県 O)
【A】
骨粗鬆症の患者の薬物治療を新たに開始する際には,治療前の骨代謝の状態を知ることが薬剤の選択に役立つと言われています。前治療薬の効果は1~6カ月以上休薬すれば消失するであろうとの想定に基づいて『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2011年版』には骨粗鬆症治療薬の影響を排除して骨代謝の状態を知るには前治療薬を1~6カ月以上休薬すると記載されています。すなわち,記載されている事項は新たに薬物療法を行う際に対応すべきことで,現在治療中の患者には治療を中止して骨代謝マーカーを測定する必要はありません。使用中の薬剤の効果を見る目的で骨代謝マーカーを測定する場合には,休薬する必要はありません。たとえば,ビスホスホネートを使用していて,その効果(骨吸収の抑制効果)を評価するには薬剤を使用している状況で測定する必要があります。
質問にある,「1~6カ月以上の休薬」は治療薬の影響を排除した状況で骨代謝の状況を把握するためのものであり,治療薬の効果を見るためのものではありません。薬物治療中の患者における骨代謝マーカーの測定は,あくまでも使用中の薬物の薬効を確認するために行うものです。図1 (文献1)に骨代謝マーカーを用いた骨粗鬆症治療薬の治療効果評価のフローチャートを示します。また,表1 (文献1)に骨代謝マーカーの基準値,カットオフ値,異常高値をまとめて示します。
ビスホスホネートを3カ月以上服用しても骨吸収マーカーが低下しない場合は,まずコンプライアンスに問題はないか,また服用方法に誤りがないかを確認すべきでしょう。
表2 (文献1)に,薬物治療で骨代謝マーカーが有意な変化を示さないときに考えられる要因をまとめて示します。正しく服用されているにもかかわらず,骨吸収マーカーが低下しない場合は,それまでとは異なる内服薬に変更するか,静注製剤や点滴製剤へ変更することをお勧めします。また,半年に1回皮下注射を行う抗RANKL抗体(デノスマブ)も薬剤変更の際に候補に加えるとよいでしょう。
1) 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会, 編:骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2011年版. ライフサイエンス出版, 2011.