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胎盤血液関門の有無とニコチン 流入の可能性

登録日: 2015.05.02 最終更新日: 2026.02.21

中村 靖 (胎児クリニック東京院長)

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【Q】

脳の血液関門は認められていますが,胎盤に血液関門はあるのでしょうか。もしあるとすれば,胎盤の血液関門を通して母体より胎児へニコチンが流入し,胎児毛細血管の収縮が起こることは考えられるでしょうか。 (鳥取県 M)

【A】

胎盤は母体循環と胎児循環との接点であり,母体血中の物質を胎児に輸送する役割を果たすと同時に,関門となる働きを有しています。薬物の胎盤通過性は,(1)分子量が小さい,(2)脂溶性,(3)蛋白結合率が低い,(4)弱塩基性,といった条件下で増大します。
ニコチンは脂溶性かつ分子量が小さいため,速やかに胎盤を通過し,母体が摂取した後,約1時間で胎児血中濃度は母体血中濃度とほぼ同等になります。胎盤において,ニコチンがコチニンに代謝されることはほとんどありません。胎児血および胎児胎盤組織中のニコチン濃度は,総じて母体血中濃度よりも15%ほど高いのです。
ニコチンによる胎児循環への影響としては,母体と同様に心拍数が増加することが知られていますが,細動脈の収縮などの反応はまだ発達段階にあり,成人と同様ではありません。母体ニコチン摂取の胎児への急性的影響は,胎児そのものよりもむしろ母体における血管の収縮に伴う血流の減少と,一酸化炭素摂取に伴う酸素運搬の障害が主な要因となると考えられます。
慢性的影響としては,喫煙する母親から出生した児において,成長後(主に成人期)に高血圧を発症しやすいことが指摘されており,この機序についての研究が進められています。たとえばラットを用いた研究において,母体ニコチン曝露が出生仔の大動脈および細動脈における血管周囲脂肪組織による抗血管収縮作用を阻害していることが判明し,出生後の高血圧発症との関連が注目されています。また,近年,母体ニコチン曝露が胎児の脳内毛細血管基底膜におけるⅣ型コラーゲンの発現を増加させているというマウスを用いた研究や,大血管においてDNAのメチル化を介したアンジオテンシンⅡレセプターの発現に影響を与えているというラットを用いた研究があります。
今後,血管系の発生・発達・機能への影響の解明がより進むことが期待されます。

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