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血清クレアチニン値と尿蛋白検査の結果が異なる場合の解釈

No.4760 (2015年07月18日発行) P.67

市川一誠 (山形大学医学部循環・呼吸・腎臓内科学 高度集中治療センター)

今田恒夫 (山形大学医学部循環・呼吸・腎臓内科学 病院教授)

登録日: 2015-07-18

最終更新日: 2018-11-27

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【Q】

以下についてご教示下さい。
(1)血清クレアチニン値が基準値内(0.6mg/dL)にもかかわらず,尿蛋白検査で陽性となります。起立性蛋白尿ではないようです。この出現メカニズムとは。
(2) 血清クレアチニン値が異常(2.6mg/dL)でも尿蛋白検査で陰性ということはありますか。
(高知県 F)

【A】

尿蛋白検査が陽性(尿試験紙法で1+以上)となるのは,尿蛋白濃度が30mg/dL以上の場合です。たとえば,尿量が1L/日であれば300mg/日以上の蛋白尿を排泄していることを意味します。健常成人でも尿中に40~80mg/日の蛋白が排泄されていますが,150mg/日以上は異常と判定され(文献1),腎臓病の最初の徴候の可能性があります。
尿中に異常な量の蛋白が出現する病態として,(1)糸球体血管壁の障害により,中分子量の血中蛋白が流出している(糸球体性蛋白尿),(2)尿細管の障害により,通常は再吸収される尿蛋白が再吸収されなくなる(尿細管性蛋白尿),(3)過剰に産生された血中蛋白が尿細管に流出し,正常な尿細管が再吸収できる量を超えている(オーバーフロー型蛋白尿),があります。
[1] 血清クレアチニン値正常者が尿蛋白検査で 陽性となるメカニズム
血清クレアチニン値が正常で尿蛋白陽性となるケースは,上記の蛋白尿が出現する病態があるものの,まだ糸球体濾過量(glomerular filtration rate:GFR)が低下していない腎疾患の初期状態と考えられます。
蛋白尿が持続すると,尿細管間質障害とネフロン数の減少によりGFRは低下しますが,慢性腎臓病では蛋白尿出現からGFRが低下しはじめるまでに数年以上かかるのが一般的です。
[2] 血清クレアチニン値が異常でも尿蛋白検査 陰性となる可能性
高度腎機能障害はあるが,尿蛋白検査陰性となるケースもあります。糸球体虚血,尿細管間質障害,アルブミン以外の尿蛋白が出ている場合などが考えられます。腎硬化症では虚血によりネフロン数が減少し腎機能が低下しますが,残存糸球体から蛋白が出なければ尿蛋白陰性となります。
また試験紙法は,稀釈尿では蛋白尿を過小評価しやすい,アルブミンに反応特異性が高いがβ2ミクログロブリンやBence-Jones蛋白などほかの蛋白には反応しないなどの特徴があり,蛋白尿を見落とすことがあります。試験紙法で陰性となる上記の蛋白は,尿蛋白定量検査では正確に評価できます。
以上より,腎臓病のスクリーニングや評価には,血清クレアチニンの測定と適切な尿検査を同時に行うことが重要です。

【文献】


1) 日本腎臓学会, 編:CKD診療ガイド2012. 東京医学社, 2012.

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