【Q】
尿の切れの悪さについての研究はあるのでしょうか。治療法や,前立腺肥大症との関係について,解説をお願いします。 (京都府 O)
【A】
“尿の切れの悪さ”は,国際禁制学会標準化部会報告の用語基準の中で,下部尿路症状(lower urinary tract syndrome:LUTS)の排尿後症状の1つとして規定されているpost micturition dribble(排尿後尿滴下:PMD)にあたると思われます。この用語の説明文の和訳は,「排尿直後に不随意的に尿が出てくるという愁訴である。この場合の直後とは,通常は,男性では便器から離れた後,女性では立ち上がった後のことを意味する」となっています(文献1)。PMDは,尿道憩室やカウパー腺などの疾患で生じることもあります。しかしそのほとんどは,球海綿体筋の機能障害で,排尿時に尿道内の尿を完全に排出できずに,体動や圧力により球部尿道などの残存尿が漏れ出てきたものと推測されています。
先日,テレビ放送で有名漫才師が自身のPMDによる高い困窮度(文献2)を“ネタ”にして“ウケ”ていたところをみると,一般にも広く認知されている現象と思われます。また,その経験頻度は,筆者をはじめ,かなりの高頻度と推測されます。PMD合併頻度は,男性では前立腺肥大症で,女性では腹圧性尿失禁でより高いとされていますが,その本態は加齢である可能性があります(文献2~4)。
PMD対策としては,排尿後に時間をおいて尿道内の尿を完全に排出してから下着をつけるなどの対策が有効とした民間療法もあります。文献的には,骨盤底筋体操,urethral milking(排尿後の尿道球部圧迫)(文献3,4) があり,薬物療法としてはα遮断薬のシロドシンが有効であるとの報告(文献5) があります。
1) 本間之夫, 他:日排尿機能会誌. 2003;14(2):278-89.
2) 小林 皇, 他:日排尿機能会誌. 2013;24(2):366-9.
3) Maserejian NN, et al:BJU Int. 2011;108(9):1452-8.
4) 田中吉則, 他:日泌会誌. 2010;101(3):554-7.
5) 杉山高秀, 他:日排尿機能会誌. 2008;19(2):198-203.