【Q】
漆喰腎や腎泌尿器結核の発症頻度(最近減少傾向にあるのか)や,呼吸器結核の診断と異なる部分について教えて下さい。 (兵庫県 K)
【A】
腎泌尿器結核(生殖器結核のみを除く)としての新規登録患者数は,2009年以前では年間100人以上でした。2010年以降の5年間では,88人・83人・82人・74人・68人の発生となっており,減少傾向であると言えます。また2014年に関しては,20歳以下の罹患患者はなく,多くは60歳以上であり,男女数は同じでした。
結核の診断は,喀痰などの臨床材料や病変組織などから結核菌を証明することが基本であり,結核菌検査は必須です。呼吸器結核の診断は,主に気道検体(喀痰,胃液,気管支肺胞洗浄液)からの結核菌の証明です。腎泌尿器結核の診断では,腎を含む尿路系に結核性病変が存在し,病変部由来の検体(病変組織や尿など)から培養検査で結核菌を証明することで確定します。
症状としては,病変が腎杯,腎盂に及ぶと膿尿や結核菌尿がみられ,進行すると尿管狭窄による水腎症で背部痛などを起こします。病変が尿管や膀胱まで及ぶと,膀胱刺激症状(頻尿,排尿時痛,残尿感など)がみられます。
尿検査では,無菌性膿尿(尿中には白血球を認めるが,細菌を認めない)が最も重要な所見です。結核菌の証明には抗酸菌染色(チール・ネルゼン法)や抗酸菌培養が必要です。ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR法)やQFTR-2G(クォンティフェロンTB-2G)も診断に使用されます。
次に画像診断としては,CTや排泄性または逆行性尿路造影法が行われます。CTでは,初期には所見が乏しく,腎盂の表面に軽度の不整がみられる程度です。その後,肉芽腫が低吸収域としてみられるようになり,単発性または多発性腫瘤を形成し,石灰化と乾酪壊死を認めるようになります。さらに進行すると,皮質の不整,菲薄化,石灰化をきたした漆喰腎となります。
また,排泄性尿路造影法では,水腎症,腎盂,腎杯の破壊像(虫食い像),腎の萎縮,腎杯と交通のある膿瘍や空洞,腎の石灰沈着を認めます。腎杯頸部の狭窄が起こると,腎盂拡張を伴わない腎杯拡張が特徴的な所見として生じます。
▼ 伊藤邦彦:腎と透析. 2014;76(3):359-62.