【Q】
58歳,女性。甲状腺機能低下症と考えています。約10年前より自己免疫性肝炎でウルソR,グリチロンR内服で治療し,現在はほとんど完治しています。10年前は抗核抗体320(+),IgG 1500mg/dL,AST,ALT,γ-GTPは基準値内でした。現在はすべて基準値内。約5年前よりTSHの値が高く,91.5μIU/mL,FT4 0.6ng/dLでした。チラーヂンRS 12.5μgを1日1.5錠服用中です。現在,TSH値77.29μIU/mL(基準値:0.5~5.0),FT4 0.6ng/dL(基準値:0.9~1.7)。甲状腺機能低下症の症状は初めからなく,現在もありません。TSH値が高くFT4低値です。阻害型抗TSH受容体抗体によるものでしょうか。このままチラーヂンRSを続ければよいでしょうか。5年以上にもなりますが,TSH値高値以外は血圧がやや低いくらいです。ほかに治療が必要でしょうか。またはチラーヂンRS服用量を多くしたほうがよいでしょうか。
(大阪府 S)
【A】
TSHのみ高値とのことですが,FT4が0.6ng/dLとかなり低値ですので,まずは原発性甲状腺機能低下症と考えて診断と治療を進められるとよいと考えます。その原因ですが,通常は橋本病によるものが大半ですので,抗サイログロブリン抗体と抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体の測定が必要です。また,阻害型抗TSH受容体抗体による甲状腺機能低下症を疑っておられますので,抗TSH受容体抗体の測定も有用と思います。
それ以外に必要な所見は,甲状腺腫の大きさやコレステロール値です。甲状腺腫が大きい場合や高コレステロール血症が認められる場合は,より厳格な甲状腺機能のコントロールが望まれます。TSHが77.29μIU/mLと著しく高値なので,チラーヂンRS服用量を多くして,TSHの正常化に努められるのがよいと考えます。TSH値は高くとも10μIU/mL未満に抑えて下さい。10μIU/mL未満に抑えられた時点で,診断に関して再確認されればよいと思います。