【Q】
Brugada型心電図のコンセンサス分類におけるtype 3について,rsr’型との区別のしかたをご教示下さい。 (長崎県 N)
【A】
2005年のコンセンサスレポートにおいて,Brugada症候群のV1~V3誘導の特徴的なST上昇は,type 1~3に分類されました(文献1)。type 1はJ点で0.2mV以上の上昇があり,coved型でT波が陰転しているもの,type 2はST部分が0.1mV以上上昇していてsaddleback型を呈するもの,そしてST上昇が0.1mV未満であればcoved型でもsaddleback型でもtype 3,と定義されました(文献1)。
2012年のLunaら(文献2)によるコンセンサスレポートでは,type 3が廃止されて,type 1がcoved型ST上昇,type 2がsaddleback型ST上昇となり,この2つに大きくわけられています。2005年の論文には記載がありませんが,2012年の論文内には,type 3とrsr’型との鑑別についての記載があります(文献2)。
図に実例を示します。図1aは,Brugada症候群の診断で植込み型除細動器(implantable cardioverter defibrillator:ICD)を装着している症例の心電図です。3年間で深夜帯に3回の心室細動が起きて,そのたびにICD作動で救命されています。図1a左のtype 3,Brugada型心電図が,別の日には図1a右のようにtype 1に変化しており,日差変動を認めます。
一方の図1bは,白内障術前の検査でrsr’型を指摘された症例の心電図です。図1bのrsr’型ではQRSの終わりに矢印のようなノッチが目立つのに対して,図1a左のtype 3,Brugada型心電図では,丸みを帯びて広く,低電位です(文献2)。論文内では,アスリートでもrsr’型が観察されることがあり,r’が尖鋭であることが特徴と記載されています(文献2)。
実際の臨床では,1回の通常肋間の心電図検査だけでtype 3とrsr’型を正確に区別できないこともあります。鑑別の難しい心電図に出合った場合には,上位肋間の胸部誘導を参考にしたり,別日に心電図を確認したりして,type 1に変化するかどうかをご確認下さい(文献3)。type 1が確認されなくても失神の既往や突然死の家族歴(45歳以下)があれば,薬物負荷試験や臨床心臓電気生理検査を考慮し,不整脈専門医にご紹介下さい。
1) Antzelevitch C, et al:Circulation. 2005;111(5):659-70.
2) Bayes de Luna A, et al:J Electrocardiol. 2012;45(5):433-42.
3) 日本循環器学会, 他, 編:QT延長症候群(先天性・二次性)とBrugada症候群の診療に関するガイドライン(2012年改訂版).