【Q】
食物アレルギーでアナフィラキシーを起こすリスクのある患者さんに対するアドレナリン自己注射薬の処方が増えています。特に学校における安全管理として,アドレナリン自己注射薬の持参を積極的に勧められることもあるようです。しかし,適応に歯止めがなくなると,本当に必要な患者さんへの注意が散漫になったり,医療費を圧迫することも懸念されます。アドレナリン自己注射薬の適応と,処方時の患者指導のポイントを,獨協医科大学・吉原重美先生に。
【質問者】
伊藤浩明:あいち小児保健医療総合センター内科部長
【A】
アドレナリン自己注射薬(エピペンR)を処方する適応は,(1)日本小児アレルギー学会アナフィラキシーワーキンググループが作成した「一般向けエピペンRの適応」(表1)中のアナフィラキシーによる症状の既往がある場合,(2)アナフィラキシーを発現する危険性が高い場合(原因抗原の特異的IgE値が強陽性,コントロールできていない気管支喘息の合併,微量で客観的症状が誘発される),(3)医師が必要と判断した場合(緊急受診する医療機関から遠方に在住,宿泊を伴う旅行),などです。
処方時の患者指導のポイントは,エピペン使用の判断基準,すなわちエピペンを打つタイミングとその打ち方を適切にわかりやすく教えることです。エピペンを打つタイミングは,表1を見せながら説明し,理解して頂いた後に,その資料を手渡すのが最も良い方法と考えます。
打ち方については「使い方ガイド」(http://www. epipen.jpよりpdf入手可能)を参考に,外来で患者さんおよび保護者に練習用エピペントレーナーを用いて,準備,注射,確認,片づけまで,しっかりと使い方を指導すると同時に,実際に打って体験して頂くことが重要です。
また,エピペンを使用した場合は,119番に連絡し,医療機関に必ず受診することを伝えます。エピペンは,あくまでも医療機関で治療を受けるまでの補助治療薬であることにご留意下さい。
なお,学校でエピペンを使用する場合,自己注射が基本ですが,低学年児童・生徒や,ショック症状などで自ら注射できない状況の患児に対して,学校職員が本人に代わって注射する場合があるので,主治医あるいは学校医は,前もって学校職員に上記と同様の指導をしておく必要があります。