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前立腺癌に対するHIFU局所療法

No.4739 (2015年02月21日発行) P.62

小路 直 (東海大学医学部付属八王子病院泌尿器科講師)

内田豊昭 (東海大学医学部付属八王子病院泌尿器科教授)

登録日: 2015-02-21

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

限局性前立腺癌に対する高密度焦点式超音波治療法(high intensity focused ultrasound:HIFU)は,いまだ保険収載はされていないものの,確立された治療方法だと思われます。近年,HIFUを用いた前立腺局所療法の有用性が報告されていますが,前立腺全体に対するHIFUと比較して,術後QOLからみた利点が,治療されなかった部位での再発の危険性を上回るのかどうか疑問です。前立腺局所HIFUは将来有望な治療になるのでしょうか。東海大学八王子病院・内田豊昭先生のご回答をお願いします。
【質問者】
鴨井和実:京都府立医科大学大学院医学研究科 泌尿器外科学講師

【A】

近年,患者の予後に影響を及ぼす前立腺癌は,体積0.5cc以上の病巣(significant cancer)であると考えられます。特に,前立腺の中で最も大きく,あるいは最も悪性度の高い癌病巣は,“index lesion”と呼ばれ,癌の進行に関わることが,臨床的に示されました。局所治療は,このsignificant cancerを正確に治療することで,臨床的な癌制御を行うことを目的としています。
HIFUは,強力な超音波エネルギーを生体内の焦点領域に収束させ,熱効果および,cavitationと呼ばれる物理的効果により,標的組織を熱凝固,および組織破壊し,治療効果を得るものです。私たちの施設における最新機器(SonablateR 500 TCM, SonaCare Medical, USA)を用いた前立腺全体に対するHIFUの5年生化学的非再発生存率は,低リスク群95.0%(n=62),中リスク群80.9%(n=144),高リスク群71.9%(n=65)と,前立腺癌に対する有効性が示されています。
HIFUの特徴として,その治療標的における焦点領域内では,前立腺組織温度が70~100℃近くまで上昇する一方,焦点領域外では組織温度は上昇しにくいこと,治療領域を自由な形に設定できることが挙げられます。つまり,HIFUは数mm単位で治療領域,非治療領域の組織変化の違いを鮮明にしてsignificant cancerを治療することができる可能性を有するため,前立腺癌局所治療に適した治療法と考えられています。
これまでに報告されてきたHIFUによる局所治療と,前立腺全体に対するHIFUにおける合併症を比較すると,尿路閉塞による排尿障害(0~5.0% vs. 6.5~41.1%),勃起障害(5.0~6.0% vs. 22.1~43.2%),尿路感染症(4.0~17% vs. 4.4~31.4%),尿道直腸瘻(0 vs. 0~0.9%)などにおいて,局所治療の低侵襲性が示されています。
一方,局所治療の治療成績については,治療後6~12カ月目に施行された前立腺生検における癌陰性率が76.5~91%であることは示されていますが,長期成績についての報告は,各施設で適応症例の選択基準や治療効果判定基準が異なるなど,前立腺全体に対するHIFUの治療成績と比較するには,現在のところ,十分とは言えません。
HIFUは,患者の予後に影響を及ぼす癌病巣を治療し,そのほかの正常組織を可能な限り温存するという局所治療の目的に適しており,将来,有望な治療法になるものと思われます。さらに,多くの症例の長期成績を集積することができれば,HIFUによる局所治療は,限局性前立腺癌に対する一般的な治療法の1つとなる可能性もあるでしょう。

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