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ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬の展望 【試験結果次第で,腎保護薬として再認識される可能性も】

No.4826 (2016年10月22日発行) P.49

林 毅 (東京慈恵会医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科)

登録日: 2016-10-21

最終更新日: 2016-10-21

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1999年に重症心不全に対するミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(mineralocorticoid receptor antagonist:MRA)の予後改善1)が報告され,MRAは心保護薬として認識されるようになった。一方,治療抵抗性高血圧患者では,血清アルドステロン濃度にかかわらずMRAの投与で明らかな降圧効果が得られる場合があり,組織側におけるミネラルコルチコイド受容体(mineralocorticoid receptor:MR)の活性化という概念が論じられるようになった2)。この概念の代表として,2型糖尿病がある。糖尿病患者に対するMRAの投与は,レニン─アンジオテンシン─アルドステロン系(renin angiotensin aldosterone system:RAAS)阻害薬への追加投与でも,アルブミン尿が減少することが臨床研究で示されていたが,わが国ではエプレレノンの臨床試験で高カリウム血症が生じ,糖尿病性腎症2期以降への投与は禁忌となっていた。

しかし昨年,新規MRAであるfinerenoneが,糖尿病患者を対象とした第2相臨床試験で,RAAS阻害薬に追加投与しても高カリウム血症をきたすことなく,尿中アルブミンを減少させることが報告された3)。今後,第3相試験の結果によっては糖尿病性腎症への適用が拡大され,MRAは腎保護薬として再認識される可能性がある。新規MRAはほかにも開発されつつあるので,今後が期待される。

【文献】

1) Pitt B, et al:N Engl J Med. 1999;341(10):709-17.

2) Shibata H, et al:Am J Hypertens. 2012;25(5): 514-23.

3) Bakris GL, et al:JAMA. 2015;314(9):884-94.

【解説】

林 毅 東京慈恵会医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科

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